二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.13 )
- 日時: 2012/08/08 02:16
- 名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
- 参照: http://
「あれ?また行き止まり……」
「おい、アンディ……また迷子か?」
そういってシャルルは振りかえる。
空の色は青空からなんとなく侘しさを感じる茜色となり、街灯がポツリ、ポツリとまばらにつき始めていた。
「ウォルター置いてきちゃったし、目的地にはつかないし……なにより、アンディが方向音痴だってのを忘れてたのが最大のミスだ!」
シャルルは両の翼であたまをかきむしる。
「羽、抜けるよ」
僕も、辺りを見回してみた。
ホテルもなければ、民宿のようなものも見当たらない。
「今日は野宿だな」
やっと騒ぎを落ち着かせたシャルルが不吉な事をくちばしった。シャルルにはナビが搭載されていて、シャルルがそういうと言うことは、実際にこの近辺には宿
がないのだ。
「えぇっ」
「えぇっ、じゃねーよ!」
シャルルも泣きそうになりながら、それでも重要な事実を忘れてはいなかった。
「さて、問題は……」
「ああ、大丈夫だよ」
「えっ?」
「ウォルターの事だろ?大丈夫だ。心配しないで、先に進もう」
シャルルはアンディの反応に一瞬戸惑いながらも、すぐに次の疑問が浮かび上がった。
「進むったってどこへ?」
「いや、ちょっと思い出したからさ。多分、期待していいと思うよ」
一方、その頃。
ウォルターは、アンディを一人で行かせたことを後悔していた。そう、アンディは方向音痴だ。まともに目的地に着けるわけがない。
「アンディー!!どこだー!!!!」
背負っている棺おけが、ガッシャガッシャと鎖が擦りあわさって重低音を立てている。
「クソッ、これが重いっ」
重い。しかし、捨てることはできない。いつ、どこでマフィアに出会うかなんてわからないからだ。
「ア……ディ……っつ、……ハァッ…………クソッ、こんなときにメルテがいれば……」
頬に汗がつたい落ちる。そして、すっかり時間帯が変わり、暗くなった足元にくっきりとうつされている自分の影に吸い込まれていく。
「…………ハァッ」
「ハァ?」
「メルテ!?」
「せっかく、微調整とメンテナンスが終わったから来てみたのに……なんですの?そのためいき。もしかして、来ない方がよかったのですか?」
電線にちょこんと座っている、しゃべり方が独特なその鴉は、ウォルターの肩に舞い降りた。
「お久しぶりですね。ウォルター マーキン。ワタクシがいない間に、アンディやカルロさんに迷惑かけていないですよね?」
「逆に、こっちがかけられてるんだよ。
でも、よかった。来てくれてたすかったよ」
「たすかったよ。
たしか、監視ロボット同士って通信できんだよな?」
ウォルターは異様なまでに早口だ。もはや、一刻の有余もない。といった感じだ。
「ええ、私達監視ロボは通信機能を持ち合わせておりますが……何です?急ぎの用事ですか?」
「ああ、早くしねぇと。アンディの迷子っぷりはもはや神の域だ。ほっとけば、地球の反対側までいっちまう。急いで、シャルルに繋いでくれ」
ウォルターは安堵の息をついた。よかった。これで、やっと連絡がとれる。
「……メルテ?」
しかし、メルテが動く気配は一向にない。それどこれか目をつぶり、一心に震えている。
「……おい、メル………」
ウォルターがメルテに手を伸ばしかけた。が、
「あんなの」
「へ?」
メルテの声が自分の声を遮り、手を伸ばすことを躊躇した。
「あんなのに回路を繋ぐ位なら、ウォルターのあたまをつついてたほうがましですわ!」
(…………え?)
「ち、ちょっと、落ち着けよ。メルテ」
さっきの意味不明な発言に突っ込んでいられる状況ではなかった。
とうとう、メルテが泣き出したのだ。
「落ち着いていられるものですか!!あれはっ……あいつは……」
「え?シャルルがどうしたって?」
「あいつは……」
「ヒックシッ」
「ん?どうしたの??」
「いや……なんか知らんがくしゃみがでた。誰か俺の噂してるのかもな」
と、シャルルは自慢気にアンディ肩で呟いた。
「くしゃみひとつって、悪い噂じゃなかったっけ?」
「……え」
僕は浮かれ気分のシャルルを心情的に打ち砕くと、辺りをもう一度見回した。
「あ、あった」
「ん?ここって……え…………」
「何?忘れたの??」
「お前まさか……」
ガウンッ
と、シャルルの言葉をかきけし、空気を振動させる音がした。
「おい、少年。
ここは君みたいなガキが来るところじゃねえぞ」
ああ、ここもか。
「おい!聞いてんのか!?」
馬鹿みたいだ。借り者の力なんて単なる自己満足じゃないか。
「聞いてるよ」
「なら、さっさと出てけ。俺は気が短いんだよ」
カチャッ、と銃弾が切り替わるおとがした
「さぁ、出て………」
「ねぇ」
わずか数秒、僕はその力を使って僕を狙っている(遊んでいる)男(子供のような) の後ろに回り込んだ。
「なっ…………!」
男が瞬きをする。
「おまえっ何者だ………!?」
銃口を前につきだし、迷わず引き金を引く。
ガウンッ、ガウンッと続けて勢いよく放たれるその弾は、持っていた鞄の止め金に当たり、鞄の口がガバッと開かれた。
ジャラリと垂れる、鈍い銀色の鎖。鎖の右端には持ち手に使う丸い輪。左端には使い込まれた感じのする、鉄錆びが所々についた巨大なギロチンがついている。
「僕が何者かって?」
「ひっ…………」
僕の瞳に映っているのは、男の顔じゃない。
汗ばんだ右手に握られている、作られた力だ。
「僕は……」
(化け物……!!)
(そう、お前はただの人間じゃない)
(普通に生きてみたいだけなんだ)
(そうだ、壊せ!!壊せ!!!!)
(アンディ)
(お前の居場所はここにある。仲間がいるところ。そこがどこであろうと、俺やカルロ、シャルルやメルテがいれば、そこはアンディの居場所になる。
いいか、今のお前は『ただ』のアンディじゃないレッドレイヴンの四番目なんだ)
「僕は……レッドレイヴンだ!!!!」
勢いよく投げたギロチンが、男の持っているスキャッグスに突き刺さり、さらっていく。
そのままギロチンもろとも壁に衝突すると、スキャッグスは粉々に粉砕されていた。
「ひっ、ヒィッ」
僕は輪を引っ張り、ギロチンを自分のところへ呼び寄せた。
「早くここから立ち去りなよ。僕は気が短いんだ」
「う、うわぁぁ!」
男は己を守る物がなくなったとたんに怯えたかおをし始め、叫びながらその場から逃げ出した。
と、同時に
「おーーいっ、アンディ」
向こうからウォルターがかけてきた。
「やっと見つけた!ったく、無駄な体力使わせんなよ」
ウォルターは額の汗をぬぐった。
「ウォルター」
「あ?」
「ありがとう」
「……え、何が?」
「僕は一線を踏みとどまることができた。それは、みんながいるからだ」
「……………………」
「だから、ありがとう」
僕は、 ペコリと頭を下げた。初めてのことだったので、何だか恥ずかしかった。
「 アンデ…………」
「それよりウォルター」
「何?」
僕は向こう側を指差す。
そこにはシャルルとメルテが二人で話してた。
「あの二羽、何やってんの?」
「ああ、シャルルのちょっとした気遣いが足りなくてな。説教されてる」
「は?」
「なんで、なんで予約しといてくれなかったのですか!?
深夜2時から始まるサスペンスドラマ!!」
「知るか!そんなもん知るか!!なんだよ、『キミと醤油』って!!」
「……なんか、入り込めない話してるね」
「ああ、俺もさっぱりだ」
そして、ウォルターは振り返った。
「で、ここどこ?」
そこは巨大な塀で囲まれている、西洋風の屋敷だった。
門には無駄な飾りがなく、黒い鉄格子のような仕様だった。
「ジョルダーニ」
「…………え?」
「聞こえなかった?さっき話してた、アンナっていうボスが当主のマフィアの本家」
「おいおい……そんなとこに来てどうすんだよ」
「ここが、唯一のあてだからね」
僕は、その大きな門を見上げた。暗いだけあって、上の方を確認できない。
「とりあえず、呼び鈴でも鳴らしてみようか?」
平然とした口調で僕はいった。