二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.14 )
日時: 2012/08/08 02:24
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://

「チリリリン」「チリリリン」「チリ……(ガチャッ)」
「はい?……あ、マーストその書類はあっち」
「……アンナ?」
「はい……え?アンディ!?ち、ちょっと待って!!いい、そこ動かないでね!!」
「うん」
その二人のやり取りをみていたウォルターは苦笑いした。
「何?」
「いや……珍しいマフィアもいたもんだ」
「それってアンナのこと?」
「だって、本来ならばレッドレイヴンとマフィアって、互いの気配を感じとった瞬間に武器を向け会う関係だろ?でも、お前らは悠長に喋ってただろ?」
「うん」と、僕は言うと、でも。と、すぐに続けた。
「アンナは周りのマフィアが持っている作られた力を使おうとはしない。
それはきっと、アンナはどこのマフィアよりも強いものを持っているからだ」
「……なんだ?」

「…………他人を大切に思う心だ。それに関しては、きっと僕もアンナに及ばない」


少し昔まで、何もかも信じられなくなっていた。

周りは白衣を着て、仮面を被った人間ばかり。

その場所にいるうちに、僕もだんだん感情が欠落していった。

「僕は今でも、笑いかたを思い出せない。感情が欠落したままだ。でも……アンナは心から笑おうとする。
そうしている限り、アンナと空っぽの力を使おうとするマフィアは違うのさ」
僕が話ているあいだ、ウォルターは珍しくも静かだった。
目をつぶり、僕の言葉を全身で受け止めているようだった

「なるほど、な。いいか、アンディ」
ウォルターは、がっしりと僕の両肩を掴んだ。
「何?」
「いい加減に、自分を機械呼ばわりするのはやめろ。
お前、さっきいったよな?
ありがとうって。あれは、形だけのものだったのか?
お前の感情は、少しも入っていなかったのか?」
「それは…………思ったさ」
「なんて?」
「……ウォルターに頭を下げる日が来るなんて、て」

数秒の沈黙が流れた

「ククッ、ハハハ」
「何なんだよ……………」
僕はウォルターの手をわざとらしくはたきおとした。
「いや、いいじゃないか。きちんと感情が入っている」
ウォルターはニヤニヤと笑って、そしてまた爆笑する。
「!!」
僕はからかわれたとわかって。気に恥ずかしくってきた
「笑うなっ!!」
サッと飛び出した拳も軽く交わされてしまう。
「お……い………ディ」
ん…………誰だ?
「アンディ!!」
はっ、と僕は飛び起きた。見慣れない場所だ。
横をみると、ウォルターが椅子に腰掛けたまま寝ていた。
「……ウォルター?」
「疲れて寝てるよ」
!!
後ろを振り返ると扉のところにアンナが立っていた。そして一気に距離を積めるてくると、まじまじと僕の顔を見た。
「……うん。大丈夫みたいね」
「何が?」
「いやっ、な、なんでもないの。うん、大丈夫!」
ピョンっと後ろに飛び退くと、僕と目を合わせないように視線の先をアチコチ探す。
「アンナはアンディのことぶん殴ったんだよ」
と、ふいにシャルルが口を挟んできた。
「……え」
ためしに頭をなで回してみる。
すると、ポコッと腫れている場所が確かにあった。
「…………」
僕は意味がわからないという顔でアンナのことをみた。
「ち……違うの!わざとじゃないのよ?でも……勢いあまってっていうか……」
「……殴ったことは否定しないんだね」
「まあ……それは事実だし…………とにかく、ゴメンッ」深々とお辞儀するのはマフィアならではのクセなかもしれない。
きっとマフィアの世界ならば、このようなお辞儀は日常茶飯事だろう。
契約を取るためには相手のご機嫌取が必要不可欠だ。
「……君ってさ、時々マフィアらしいよね」
「ちょっ、それどういう意味!?」
「別に」
アンナの怒りを出来るだけ買わないように、僕は早々にはなしを切り替えた。
「……で、ここどこ?」
周りを見回しても、有るのはこのベッド一つと木製のの丸いす一つ。それから光源には蝋燭一本という、非常に質素な作りだった。

まあ、僕の部屋ほどではないが。
「ああ、ここは私達ジョルダーニが、管轄している孤児院よ。
親を亡くした子供達や、親に捨てられた子供達が来るところ」
「ふーん……」
「でも」とアンナは続けると、顔に影をおとした。

「最近、特に多いわね。
主に来るのはマフィアに親を殺された子供達…皮肉なものよね。親を殺された奴の所にくるんだから」
「……」
「そういえば、なんてアンディ達はアラバントの街にきたの?」
「仕事……と言ってもマフィア柄みじゃないから、安心していいよ」
「仕事?」

「うん、人使いの荒い上司の命令で、特別任務中」
「何?」
……僕は少し迷った。アンナなら力になってくれると思って来てみたけど、さっきの話しを聞くとどうも頼みづらい。
いや、僕はレッドレイヴンだ。私情は挟まない。
「……あのさ、アンナ。頼みごとがあるんだけど」
「何?」
黒い瞳が、僕を見る。
「グッ…………ッ孤児院の子供達に……会わせてくれない?」
言葉がうまく出てこなかった。喉の部分まできているのに、出てこない。
そんな、もどかしい感じだった。
「いいけど……多分大変な事になると思うよ」
「え?なんで……」
「まあ、いけばわかるから」
アンナは苦笑いした。

「?? うん。ありがと……っと。ウォルター起きろよ」
ペシッと頭を叩いてみる。
「いっ……あ、アンディ。起きたのか」
「早くコート着ろよ。仕事だ。今から、ジョルダーニが管轄している孤児院にいってみようよ」
僕は衣装スタンドに掛かっているウォルターのコートを放り投げた。
「サンキュー」
「じゃあね。ありがと」
「うん。本当に気を付けてね」
このあと、僕達はアンナのこの意味深な言動の意味を、嫌というほど知ることになる。