二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.15 )
- 日時: 2012/08/08 02:38
- 名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
- 参照: http://
「ねぇ、あそんで、あそんで!」
「あのっ、ちょっと……痛っ,髪引っ張るな!」
「わ〜喋るカラスだ!」
「やめろ!羽抜ける!!」
孤児院について早々、ウォルター達は腰をおろす余裕もなく子供達に囲まれてしまった。
これでやっと、アンナの言っていた意味が分かった。確かにこれは辛そうだ。
「二人ともハゲるの必死だね」
「アンディっ……お前、そこで悠長に座って見物なんてしてんなよ!」
「だって僕の所に子供来ないし」
ウォルターは何となく絡みやすそうな容姿で、シャルルは珍しがられて子供達の人気を集めていた。
正直、僕は子供は苦手だからこの状況は都合が良かった。
「ねぇねぇ」
「!?」
そう思ったのもつかの間。ふいに話しかけられて、僕は反射的に後ろを振り返った。
そこにいたのは、9歳ほどの女の子だった。白い肌に、碧の髪。碧色の目という綺麗な顔立ちをしている。
……後ろに居たことに、全然気付かなかった。
「お兄ちゃんは、なんでおめめ隠してるの?」
興味津々に眼帯を見つめている。孤児院ではそんなに珍しい物ではないと思うけど……。
「……事故だよ」
面倒事は、さっさと流すに限る。それに……こんな子供にこの目の真実をかたる気は少しもなかった。
「嘘」
「……え?」
(今……なんて)
「お兄ちゃん、今嘘ついたでしょ。いけないんだ〜。神様が見ているって神父様が言ってたよ」
女の子は、わざとらしく頬を膨らませて怒ってみせた。
しかし、そんな幼稚な行動と裏腹に碧の瞳がものをいう。
私、何でも知っているのよ
そんな事を言いたそうに、少女の碧い瞳が笑った。
「君……何物?」
僕は、本能的にこの子供を危険人物と見なしたようだ。座っているギロチン入った鞄の止め金に指がかかる。
フフっ、と女の子が口元に笑みをこぼした。いかにも、僕のこの言葉を待っていたかのように見える。
「私の名前は、リナージュ。リナージュ=マントハッタよ!
よろしくねぇ、お兄ちゃん」
差し出された右手を、僕はただ見つめているしかなかった。
「どうかしたのお?」
何も反応しない僕に、リナージュはついに右手をおろした。
つまらなさそうに口をとがらせ、まるで子供に喧嘩の理由を聞いているような口調で不思議そうに声をあげる。
「……いや。何でもないよ」
僕は彼女と目を出来るだけ合わせないようにした。なんか、この子の目は怖い。
心の中まで見透かされては、たまったものではなかった。
「そうお?じゃあ、私達これからミサだから。じゃあね! さあ、皆。早くいこう」
「うん!リナージュお姉ちゃん」
「ベス、早くいこうよ〜がみんな行っちゃうよ!」
「え〜。喋る鴉もっと見たい!」
「やめろーっ、抜けるっ、羽抜けるから!!」
リナージュは見た目でいえば一番年上だ。実際、子供達のリーダーのような役割をしているようだ。
子供達が去ったあと、ウォルター達は疲れきった顔をしていた。
シャルルにおいてはその場にうつ伏せになり、ゼェゼェと息をたてている。
「は〜。やっと終わった。それにしても恐ろしいな……子供ってのは」
ウォルターは乱れた髪を整え、小さくもううんざりだ。と、呟くと足元に転がっている小さい椅子に腰掛けた。
「はぁ〜っ。これからしばらくはこれが続くのか。ダルいなぁ」
「…………」
「アンディ?」
僕はしばらく宙を見つめていた。もしかしたら、リナージュ……あの子だったら今回の任務をクリアできるかもしれない。
でも………
『わたし、何でも知っているのよ』
そう言いたげだったあの瞳が忘れられない。
「ウォルター」
けど
「あ?」
僕はレッドレイヴンだから
「もしかしたらそれは反乱を引き起こすかもしれないし、もしくは万有の戦力を得られるかもしれない」
私情は挟まない
「そんなジョーカーみたいなカードを手にいれてみる気、ある?」
こんな事、ずっと前に決めたはずなのに。今でも僕は、きっと迷ってる。
そんな弱い過去の自分が、まだ。
どこかで僕を狙っている
『見てごらん。きれいだろう?』
『うん!とても綺麗!何て言う石?』
『カズトック鉱石っていうんだ。ほら、太陽のひかりにあたると、赤色に光るんだ』
『本当だ。まるで太陽を映したような色だね』
『ああ……まるで太陽のような石だ。これ、お前にあげるから、大事にするんだよ。パルス』
『うん!父さん!』
「アンディ……?どうした、ぼおっとして」
はっ、と僕はわれにかえった。なんだろう、今の回想……パルスって誰だ?
「アンディ?」
なにも反応しない僕に、ウォルターは珍しく心配そうな顔をしている。
しかし、そのカオには疲労がにじみ出ていて、いかにもつらそうだ。
「……ウォルター、先にカルロに連絡してきてもらえる?僕一人でこの件は片付けたいんだ」
もしかしたら、厄介な事になるかもしれない。そんな中で倒れられても迷惑だ。
「……わかった」
チラッ、とウォルターは僕の顔を見ると壁に立てかけていた棺をつかみ、ドアのほうへと歩き出した。
「アンディ」
ウォルターはドアノブに手をかけた。後はまわせばいいだけなのに、もどかしくもそこで動作をとめる。
「何?」
「……無茶、すんなよ」
ガチャッ、とドアを開ける音が静かな子供部屋に響く。ウォルターはそれだけ言うと振り向きもせずに部屋を出て行った。
「……余計なお世話だ」
ポツリとつぶやくと、僕は気絶しているシャルルと鞄を引っつかんで部屋を出た。
右を見ても、左を見ても同じような景色で、いつになったら目的地につけるか分からない。自分の方向音痴は自覚している。でも、何故だか直らない。
「しょうがないな……ねぇ、シャルル起きてよ」
「…………」
少し揺らしてみるが、まったくもって動く気配が無い。……軽くたたいてみるか?昔からよく言う、電化製品はたたけば直るってやつを実践してみるかな。
「起きろって」
ガッ、と鈍い音がする。
「イテッ、何すんだよ!」
シャルルは頭を擦り、涙目で訴えた。シャルルはロボットだ。殴られても、僕のように腫れることはない。
「ねぇ、シャルル。ここの孤児院で一番人目につきにくいとこ探して」
「え……なんで……」
「いいから、早く」
何か、嫌な予感がする。早くしないと色々な事がまにあわなくなるかもしれない。
シャルルは、不思議そうな顔をしながらも辺りをスキャンし始める。そして十秒もしないうちに場所を割り出した。
「えーと……あ、あった…………」
「グウッ、ッ………」
「おい、アンディ!!どうした!?」
僕はその場膝をついた。嫌な汗が頬を伝い、地面に落ちる。
何だろう……胸の辺りが痛い。
「はあっ……は……は……いや、大丈夫だ。早く行こう」
足に力が上手く入らない。鞄を支えに、ようやく立ち上がる。
しかし、まだ歩く事が出来ない。ヨロリと一歩を踏み出すのが精一杯だ。
「おい、アンディ……無茶するなよ」
肩に乗っているシャルルのその言葉に、思わずうっすらと苦笑いした。
「……何で笑ってんだ?」
「いや、皆おせっかいだなって思って」
(アンディ、無茶すんなよ)
ウォルターの顔が、フッと頭を過る。あの時、ウォルターの目は真剣だった。いつものなんかダルそうな感じは一切なく、真っ直ぐな目をしていた。
……きっと、ウォルターは察していたんだ。僕の考えていた全ての事を。
(心まで見透かされたんじゃたまったものじゃないな)
「…………」
「アンディ?」
「いや、何でもない。行こう」
足を再び踏み出そうとした、その時だった
ガウンッ……
向こうのほうから、二発ほど銃声がした。それと同時に建物が崩れる音と人の叫び声がする。
「チッ、始まった……!!」
僕は駆け出そうとした。が、すぐにその場にふみとどまり、鞄の留め金を外す。
「何で……」
「何で?ははっ、それはオレもききたいんだけど」
ギロチンを片手に僕は相手を睨んだ。
白い髪に白いスーツ。それとは対照的な人を見下したような黒い笑み。そして、一切の光を受付ない青の目。
「なんで、オレがこんなとこに派遣されなくちゃならねぇんだよ」
ニイッ、と口角を吊り上げてその男は笑う。
「やあ、アンディ。元気だったか?」
「…………バジル」