二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.17 )
- 日時: 2012/08/08 02:49
- 名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
- 参照: http://
……アンナの言っていた通りだ。ここの子供たちは、マフィアにいい印象を持っていない。
「愛想良くして、いつかあのマフィアを潰してやるつもりだった。だから、私たちは自ら力を望んだ」
段々と、声が力んでいく。時折グッと言葉を詰まらせ、泣き声をおさえていた。
「……スキャッグスに手を出したのか?」
「あんなものっ……キライだ。私たちはあれを使わない。だから、自分達で強くなるって……決めたんだ!!!!
」
リナージュは周りの子供たちを見回す。
「ベスは機械に関する事なら大人にも負けない知識を得たし、アニーは大きな剣を振るえるようになった。私は銃を扱えるようになった……スキャッグスがなくても、皆立派な戦士よ」
その声は、実に真剣だった。
「……スキャッグスを使うマフィアなんて、人形と同じだわ。奴らは私以下よ。だから、今日にでも潰しに行くつもりだったのに……まさかレッドレイヴンが客人として招かれるとは思わなかったわ」
「……アンナは他のマフィアとは違うよ?」
「どこが!!」
「アンナは、スキャッグスを作られた力と解っている。それに……」
「それに??」
「心から笑おうとする」
アンナのその姿を見たとき、人間としての格差を感じた。
その喜という感情は、かつて僕も持っていたパーツの一つだった。
でも、長い事使っていなかったせいか錆び付いてしまってうまくその歯車が回らない。
時折、その事に虚しくなりさえする。
「君はまだ幼い。きっと、まだ間に合う」
「…………」
リナージュは顔を俯いたまま、挙げなくなってしまった。足元には黒い点がポツリ、ポツリと止まることなく落ち続ける。
「グッ……ヴッ、ヴッ」
唇をかみ締め、必死に泣き声を抑えているようだった。
「……何で、そんなに頑張ろうとするんだ」
僕は足元にギロチンを置き、一歩ずつゆっくりと近寄っていった。見た目は九歳の小さな少女。でも、胸のうちに秘めていた思いはきっと想像を絶する大きなものに違いない。
「……私が自分勝手に決めたマフィアを潰すという事に皆が賛同してくれた。この子達にも、きっとやりたいことや批判する心があったのに………」
リナージュは涙で汚れた顔を挙げると、僕の瞳をまっすぐに見て訴えた。
……これは子供の目じゃない。立派な大人の眼差しだ。
「だからっ……もう、引き返せないと思った!どこかでは感じ取っていた。アンナさんが優しいことや、自分が間違っているということ。でも……でも……」
「……自分の考えのせいで子供たちの運命を変えてしまった。っていいたいんでしょ?」
リナージュは一瞬、ビクッと体を振るわせた。そして、恐る恐る周りの子供たちの顔を見て
「……うん」
とつぶやいた。
「きっと、皆馬鹿だと思って笑ってるわ」
薄っすらと、恐怖からくる笑みをこぼした。歯がカチカチと鳴り、無理に口を動かしているのが良く分かる。
……そのとき、子供がポンッとリナージュの頭に触れた。
「エライ、エライ」
「……ベス?」
「さっき、リナージュ姉ちゃんそういって僕の頭、撫でてくれたでしょ?」
「何で……」
ベスがこれでいい、と確信しているのに対してリナージュは意味が分からないというような顔をした。
「え?だって、リナージュ姉ちゃん頑張ってたんでしょ??頑張ったら、頭を撫でるんでしょ??」
「…………つっ」
ベスのその言葉に、リナージュはせき止めていたものが切れたかの様な声を出した。そして、ベスのことをギュッと抱きしめると再び涙を流し始めた。
「僕、間違ってたかなぁ」
「ううん……これでいいの。皆も、良くがんばったねぇ」
リナージュは残りの子供もまとめて抱きしめると、一人一人にほお擦りした。
「えへへっ、ほめられたよ」
「うん、いいことをした後にリナージュ姉ちゃんにほめてもらうの、大好きっ」
「……本当に、ここにはマフィアに対する憎しみしかなかったの?」
僕は子供たちと戯れて、笑顔でいるリナージュに問いかけた。すると、さっきとは全く違う、心からの笑みでリナージュは答えた。
「ううん……そんなこと無い。それに……それにね、私の本当の思いも、今、ここでかなったの」
「何?」
「一度だけでいいから……皆の前で、自由な笑顔で笑ってみたかったの」
その瞬間、僕は彼女にアンナを見た。
「……よかったじゃん」
「うんっ」