二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: RR 赤イ翼ノ執行人 〜人は単純だ。だから、つまらない〜 ( No.19 )
日時: 2012/08/08 03:06
名前: 東洋の帽子屋 (元 神咲 裕) (ID: 393aRbky)
参照: http://

と、アンナはどうにかして目で訴えてくる。
……まあ、普段ならありえない話を持ちかけてくるなぁ、と思ったかもしれない。

そう、普段なら。

「……アンナ、悪いんだけど今から僕がとる行動に動揺しないでね」
「……へ?」

僕はコートの内ポケットから、封筒を取り出した。
「黒い……封筒?」
「そう。黒い封筒。この中に、今回の特別任務の内容が書かれた紙が入ってる」
「特別……任務」
黒い封筒から取り出されたのは紙切れにも似た便箋だった。
そこには赤いインクで文字が綴られている。
一歩前へ出て、僕はその内容を読み始める。
『今回の特別任務は、レッドレイヴンにふさわしい人材を見つけてくること…………だってさ」
僕はアンナを振り返った。意外にも表情は落ち着いていて、そして全てを理解したように
「そう」
と呟いた。
「つまり、アンディは私にこの子達を引き取らせてくれ……そう、言いたいのね?」
アンナは眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。
わかっちゃいるが、認めたくはない。そんな感じだ。

しかし、僕は
「うん。その通り」
と、なんの違和感もなく軽々と口にした。
……その言葉に更に頭を悩ませる様がみてとれる。アンナは更にシワを寄せると、うつむいて顔をあげなくなってしまった。
「…………」
時たま、ブツブツ言っては手で何らかの仕草をする…………そんな繰り返しが数回続いた後、ついにアンナは
「うん」
と、一言、発した。
「わかったわ。この子達の事、アンディに託す。私はマフィアだから……。それだけでこの子達を苦しめてしまう」
アンナは子供達の事を振り返った。
その目は憂いに満ちていて、時々揺らぎそうになる。
……どうしようもなく、自分は無力だ。と、ポツリと呟いたのが隣にいた僕にだけ聞いてとれた。
「……すみませんでした」
アンナは深々と、子供達に頭をさげた。

それはきっと、アンナならではのけじめだった。

子供はなにも悪くない。

悪いのはワタシタチ。

あなた達の家族を奪ったのも、スべテを破壊して、踏みつけて回ったのもワタシタチ。

それが例え、自分達が直接的に関わってないとしても。


マフィアの同列であることに、変わりはない。


「……アンナ?」
「あっ……ごめん、アンディ」
アンナは顔を上げると、無理に表情を作ってみせる。
「この子達、宜しくね」
アンナはポンッ、と僕のかたに手をおくと、羽織っているコートを翻して聖杯堂を出ていこうとした。

……と、その時だった。



「おいおいアンディ、それはねーんじゃねぇの?」

「!?」

突然、天井から声が聞こえた。
アンナとリナージュは即座に天井を見上げる。
……しかし、僕は姿を見ずともそれが誰だか分かっている。
「この声は……」
その声の主は飛び降りて来ると、見事地面に着地する。


……それは清き鳩にも似た、白い衣をまとっただけの黒い鴉。


「バジル」
「よう、アンディ……と、穏やかに再会出来れば良かったんだけどな」
バジルはそこいら一帯に転がっている
コンクリートの塊の一つに近寄った。
「だが、あいにく今は……」
ガッ、と左手でコンクリートの硬い肌に爪を立てる。

「コンクリートがっ……!!」
バジルが爪でなぞった部分にそって、深い溝がいとも簡単にコンクリートに刻まれていく。
「今は、気分サイテーなんだよね」
手についている、腐食した黒い屑を払いながらバジルは眉を吊り上げてニタリと笑う。
「無駄な死人は出すな、面倒事には首を突っ込まず、時間きっかりに帰ってこい……つまらなすぎると思わないか?」
バジルは両手を広げ、大きな声でセリフを口にした。
……その仕草はまるで、舞台に立って熱演している役者のようだ。
「……もう一度聞く、何で来たんだよ? 三流役者」
「おおっと、中々手厳しいな」
バジルはククッ、と微笑する。
「…………でも」
「!」
ボクはバジルが声のトーンを一つ落としたことに気がついた。
途端に、足元に置いていたギロチンを手に取る。
「アンディ??」
「……アンナ、子供達を連れて逃げて」
「えっ?」
「このパターンはヤバイ。バジルは相当キレてる」

その言葉を聞いて、アンナはチラリとバジルの事を見る。
「……別にそんな感じはしないけど」
「いいから、早く!」

「おい」

「「!!」」

「なにボソボソと喋ってんだよ。言わなくても分かるだろ?アンディ。俺は気が短いんだ」

—その台詞と同時に、空気が震えた。

「行け!」
ボクはギロチンを構えなおす。
……と、目の前に一筋の閃光が走った。
『猛毒蠍 "デス・ストーカー"』
「……っ!」
ギャリンッ、という鈍い、嫌な金属音が辺りに響く。