二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: レッドレイヴン 赤イ翼ノ執行人 ( No.3 )
- 日時: 2012/08/01 15:24
- 名前: 東洋の帽子屋 (ID: kphB4geJ)
- 参照: http://
ボクはもう一度、ギロチンを振りかざした。
「……ボクが手に入れたのはからっぽの力じゃない! !本物の力だっ!!」
「……っ!」
バジルは猛毒蠍を反対の手に持ちかえ、ギロチンを受けとめる。
ガッ!!!
今までのどんな時よりも激しく、二つの刃が対峙した。
キッ、キチッと小さく音を出しながら、ボクもバジルも譲らない。
「からっぽじゃない…?いや、違うな。現にお前は、スキャッグスを持っているじゃないか」
「ああ、そうさ。これは戒めだ。ボクにスキャッグスを忘れるなっていうね」
ギッ、と深い音を出してバジルが押されだす。さっきの斬撃が堪えたのだろう。
(……ちっ)
バジルが顔を歪めた。と、その時だった。
「こっちこっち」
「!」
バジルの背後から鞭が飛び、髪の毛を二、三本掠めとっていく。
「なっ…」
唖然とする暇もなく、ボク達は後ろに飛んで突然の敵襲を警戒する。
「けほっ…ふー……また、やり過ぎたかな」
「……てめえ」
土ぼこりの中からゆったりとした口調で歩いてきたのはリナージュだった。
涙目になりながら、咳払いを繰り返す。
「アンディさん。無事でしたか」
「そうでもないよ。ボーッとしてたら着地に失敗して、あばら折ったかも」
ボクは胸のした辺りを軽くなで回す。所々腫れ上がっていて、なんとなく自分の体の状況を把握できた。
「……バジル。今日はここまでにしとこうよ。その傷じゃ、ボクたち二人を相手するのは難しいんじゃない?」
バジルの腕からは血が流れ出し、止まる気配がない。
折角の白いコートも赤にじわじわと染まっていく。
「……いや」
「!」
(……キレてる)
バジルの殺気立った声にあわせ、猛毒蠍は蒸気を上げる。
シューッ、と鳴く様は蠍同然だった。
「最悪でも…」
バジルは肩越しにリナージュを睨む。
「リナージュ! 逃げろ!!」
(あの鞭で受けたとしても…腐蝕して終わりだ!)
「お前をぶっ潰してからだ!!!」
……と、バジルが猛毒蠍を投げ出そうとしたとき。
「おい、バジル。帰ろうぜ」
どこからともなく低い、男の声がした。
「どこからっ…」
ボクは辺りを素早く見回す。辺りは瓦礫の山だ。隠れる場所なんていくらでもある。
「ああ。こっちだよ」
「!」
上から再び声が飛んできた。
「初めまして。君がアンディか」
男は悠長に語る。
しかし、男から発せられる威圧感と殺気はハンパな物ではなかった。バジルとリナージュではくらべものにならない。
「…あんた、誰だ? なんでボクのことを知ってる」
「さあ? どうしてだろうね。とりあえず、今日は遊びにきたわけじゃないんだ。そろそろ騒がしくなりそうだし、失礼するよ。うるさいのは苦手なんでね」
男は ほら、帰るぞとバジルを急かす。
「……ちっ。じゃあな、アンディ」
バジルは問答無用といった感じでその場を後にしようとする。
「待てよバジル! あいつは一体なんだ!!」
ピタリ、と動きを止めるとバジルは後ろを振り返ろうともせず、ただ
「……俺たちが、あの人の他に唯一怯える存在だ」
と、呟いた。