二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: レッドレイヴン 赤イ翼ノ執行人 ( No.6 )
日時: 2012/08/02 09:09
名前: 東洋の帽子屋 (ID: 07JeHVNw)


バジルが去った後、孤児院は恐ろしいほどに静まり返った。

柔らかな日の光が頬を照らし、風がゆっくりと横を通りすぎる。
外野のわめき声も徐徐に聞こえてきて、灰色だった時間に色が戻りつつあった。

「……なんで、助けてくれたの?」
ボクはポツリと呟いた。

あの時点で、あのタイミングで。これほどの戦闘力をアンナに見せつければ、この孤児院を壊したのだと疑われても仕方がない。

それでも、ボクを助けたことに何か意味があるのなら知りたかった。
「……分からない。あのとき、あの瞬間で何を思ったのか」
リナージュは鞭を両手で握りしめた。
そして、うーん…と小さく唸るとパッ、と思いついたように顔をきらめかせ、ボクを見上げた。

「助けられたから…助けられたら、恩返しをしなさいって。アンナさんが言っていたの」
「アンナが?」
ボクとリナージュは後ろをチラリと見た。
アンナはいまだに子供たちにズボンの裾を引っ張られ、その相手に悪戦苦闘中だった。
苦笑いし、時には笑い……本心から、それを羨ましいとボクは感じた。
「さっきも言ったけど……アンナは確かにマフィアだ。でも、他のマフィアとは違うなにかが、アンナを支えている」
「うん……今なら、分かるよ。あの人は、地上で一番優しいマフィアだ」


ー 遠くの方で、アンナを呼ぶ声がする。
その声に彼女は敏感に反応し、急いで駆けていった。
彼女を呼んだのは、ジョルダーニファミリーの部下達だった。

彼女が手短に一通りはなし終ると、それに賛同しかねるように周りはしばらく反応しなかった。
しかし、一人が賛同の手を上げると、それにつられるように全員一人一人が残らず手を上げた。

すると彼女は空を仰ぎ、大きな声で叫んだ。



この子達のこと…宜しくね。と。