二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【とんがりボウシ×イナイレ】 魔法界へのトリップ ( No.23 )
日時: 2012/09/07 16:44
名前: メロンソーダ ◆cSJ90ZEm0g (ID: nWEjYf1F)

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 半田〜フェリシダ王国 レーズンタウンにて〜

 円堂似の少年は、カーチェス=フェリシンと名乗った。この青の国・・・フェリシダ王国の王子なのだという。
 クロードが案内してくれた場所は、クリスタル状のレンガで造られた、小さな塔の中だった。ごくわずかだが、淡い光を放っている。
 その不思議な見た目にしばしぽかんとしていた俺は

「半田、入るよ」

 というマックスの言葉で我に返り、慌ててその建物の中に入った。

「校長、相談があります」

 クロードが中に入るなり声を張り上げた。
 俺たちは、クロードが声を掛けた相手よりもまず、塔の中の異様な光景に目を凝らした。
 部屋を埋め尽くす無数の本。それ自体は俺たちの世界にある図書館にも存在するので別段驚くことではない。異様なのは、それらの本の何冊かが・・・宙に浮いているということだ。
 部屋の奥には塔状に本が積み上げられていて、いつ崩壊してもおかしくないほど高い。そして、その上に・・・。

「やあ、クロードくん。なんですかな、相談とは」

 ・・・太陽だ。
 存在がまぶしいとか、明るいとか、そんなんじゃなくて、本当に、見た目が・・・顔が、太陽の形をしている。

「クロード・・・あいつ誰?」

 円堂の言葉に、クロードは声をひそませた。

「赤い屋根の建物、見た?あそこがレーズン魔法学校。そして、あの人が・・・校長だ」

 校長は立ち上がると、悠然と本の階段を下り、俺たちの目の前で足を止めた。

「フム・・・彼らは・・・?」

「異世界から来たそうです」

 クロードが表情ひとつ変えずに説明し始めた。その間校長は無表情のまま黙っていたが、カーチェスは未だに信じがたい、と言いたげな顔をしている。

「ホントかよ、クロード。異世界・・・って・・・不思議時間にもなってないのに、そんなことありうるのか?」

「莫迦なカーチェスでも、そのくらいのことは疑問に思えるんだね」

「あったりまえだろ!」

 カーチェスは憤慨して大声を出したが、校長の視線を感じてすぐに口をつぐんだ。

「そうですね・・・」

 カーチェスから視線を外し、校長は静かに目を閉じた。

「クロードくんの、そして彼らの言うことが全て嘘偽りない真実だとすれば・・・彼らの世界に、危機が訪れたということかもしれません」

「俺たちの・・・世界?」

 緑川が眉をひそめる。

「つまり・・・魔法界に一番近く、似た形の生き物が住み、同じ言語を使う世界っていったら・・・人間界だよね?」

「その通り・・・」

「!! なっ・・・」

 唖然とする俺たち。
 校長は諭すように言葉を続けた。

「具体的なことは分かりません。しかし、そう断定するのが妥当でしょう。不思議時間が起こらぬ限り、異世界から誰かが訪れてくることなど、ありえない。異世界を繋ぐ空間にそういとも容易く足を踏み込めるなんて、滅多になかった」

「不思議時間って、なんですか?」

 吹雪が質問した。

「魔法界と、どこかの異世界が繋がって、奇怪な空間が現れる時間帯のことだよ。ここレーズンタウン特有の現象で、意図的に引き起こすことだってできる。その直後、必ずなにか事件が発生するんだ」

 クロードが簡潔に答えてくれた。その話しぶりというか、振る舞いというか・・・彼の雰囲気は、なんだか賢い印象を与える。そのへんは学校の赤点及び居残り組のマックスとは大違いだ。

「そして、君たちには酷かもしれませんが・・・」

 校長が言う。

「君たちは・・・しばらく、元の世界には戻れないかもしれません。大げさに開放された異空間は、そのあと大げさに閉ざされてしまうのです。百年ほど前にも、似たような現象があったらしいですから」

「・・・そんな・・・」

 向こうに残っているサッカー部のみんなの顔が、ありありとよみがえってきた。
 もう会えない?みんなに、もう二度と?
 そんなことって・・・

「二度と戻れないわけではないでしょうが・・・」

 俺の気持ちを読んだかのように、校長は続ける。

「しばらくは・・・様子をみましょう。・・・そこで、君たち8人には、一番この町で大きい家と、家具、それに約3名に、レーズン魔法学校に入学する権利を与えましょう」

「学校・・・魔法界の!?」

「明日までに決めておいてください」

 校長はそう言い残し、杖を取り出すと、光を放ちながら消えた。
 気付けば、俺の手には小さな鍵が握られていた。

「・・・あ、それ、家の鍵だね。僕、その家の場所知ってるから案内しよっか?校長のことだし、もう準備されてるよ。きっと」

 クロードは、校長ならできて当然という表情で塔から出て行った。