二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【とんがりボウシ×イナイレ】 魔法界へのトリップ ( No.26 )
- 日時: 2012/09/11 15:54
- 名前: メロンソーダ ◆cSJ90ZEm0g (ID: nWEjYf1F)
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緑川〜フェリシダ王国 レーズンタウン「川沿い」にて〜
————暇。
俺たちが魔法界に来てからはや一週間がたつ。
ヒロトたちの学費は免除されているが、それ以外の生活費は全て自分たちで稼ぐ必要があった。この町の商店街にある魔法道具屋「かめや」のトメお婆さんのもとでバイトしたり、物を売ったりすればそれなりの金額が手に入った。
そして、俺と少林が今やっているのは・・・釣り。
水面が震えている場所が絶好のポイントだというクロードの教えを信じ、こうして長時間川に釣り糸を垂らしているわけだが———。
(全然だめじゃん)
少林はというと、最初こそやる気に満ちていたが、今となっては表情が不機嫌そのものへと変わりつつあった。たまに「何なんだよ・・・」と悪態をつく声まで聞こえてくる。
「あ———もう!疲れたあ!!」
とうとう少林は釣竿を投げ出し、その場にごろりと仰向けになった。
「おい少林。サボるな」
叱ってはみるものの、彼からの返答は分かり切っていた。
「だって、全然かからないじゃないですか」
「まあ、そうだけど」
俺もサボっちゃおうかな。・・・と思っていた矢先。
突然、背後で草を踏む音が聞こえてきたので振り向くと、秋が腰に手をあて少林のことを睨みつけていた。曰く、
「少林くん、魚に釣竿持ってかれちゃうよ。なに寝てんの」
少林、答えて曰く、
「町中の川沿いを歩き回って試してみたけど、全然魚がかかりません。無意味だと思います」
秋のキツイ声反駁してなおも続く。曰く、
「それは、少林くんの根性がないからよ」
少林も負けじと言い返す。曰く、
「根性とか関係あるんですか?魚いないのに」
・・・と、こうしたやり取りが数分続いたのち、俺と少林は再び川と対峙し魚を待ち続ける羽目になった。なんだかんだで、秋には敵わないということを痛感させるやり取りだった。
しかし、少林は未だに地面に寝そべったままだ。
「いい加減、起きたら?」
俺が少林を見下ろしそう言ったとき、突如少林が起き上がり俺の背後を指差した。
「みっ・・・緑川さん!」
「なんだよ」
「竿!」
「!?」
はっとして振り向くと、なんと俺の釣竿の先がグイグイと引っ張られていたのだ。
「やっとかかったな!」
俺は竿を握りしめ、思いきり引っ張った。しかし・・・相手の力も尋常ではない。川には黒く大きな影が映っている。巨大魚の類かもしれない。
「うわあ・・・でかいぞ!」
「サメだったりして」
「げっ・・・」
思わず竿を持つ手が震える。
「冗談ですよ。俺も手伝います!」
俺は少林が持ちやすくなるように竿を低くおろした。その間にも、魚は容赦なく俺を引っ張っている。
「せ——・・・のっ!」
少林の馬鹿力には驚いた。魚は、あっけないほど簡単に陸に釣り上げられた・・・って。
「でかっ!!」
それは、体長が俺の二倍はありそうな、巨大な錦鯉だった。
「こりゃいいぞ!塔の魚の書に見せてこよう!」
と、二人で盛り上がっていたら。
魚が、自力でピョンピョンはね出した。でかすぎてとてもおさえられない。次の瞬間、魚は川に向かってピョーンとはねた。
バッシャ———ン!!
もろに水をかぶり、俺と少林はただその場に突っ立っていることしかできなかった。
重い沈黙のあと、少林が口を開いた。
「・・・緑川さん」
「・・・何?」
「今度は、ちゃんと大きさも考えなきゃダメみたいですね」
「ああ・・・そうだな」
誰も見ていなかったのがせめてもの幸いだろうか。
俺たちは、びしょ濡れのままとぼとぼ家へと戻っていった。