二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: めだかボックス 知られざる悪平等 ( No.130 )
日時: 2012/10/20 22:37
名前: シャオン (ID: r4m62a8i)
参照: http://.kakiko.cc/novhttp://wwwel/novel3/index.cgi?mode



 祝参照2000突破記念!!  無心 過去の記憶編パート4


 
 荒れた保育施設、荒れた教室、荒れたグラウンド、荒れた遊具。その全てが荒れた中で少女は教室の隅っこに座っていた。他の子供たちや先生たちはいない。元々、ここの園は閉鎖されている。この少女の手によって。

 「今日は私が生まれた日。・・・これで15回目。」

 頭を壁に当て、生気の無い眼で呟いた。どうせ今年も誰も祝ってくれないだろうと、ふと思った。そんな時、


 パキッ


 と外の方から木の枝が折れる音がした。その音に少女は体をピクッと動かし、反応を示す。

 
 「・・・誰?」


 静かにそしてか細く、少女は向こうにいる人物に尋ねた。しかし、少女の声が小さいせいか、返事がない。少女は立ち上がり、外の方へと足を進める。外に出た瞬間、夕日の光が眼を眩ませた。しかし、次第にそれに眼が慣れていき、ゆっくりと周りを見回す。そこには


 「見つけたぞ、燈蔵。」


 見覚えのある青年の姿があった。すると、それを見た少女の表情は段々険しくなり、そして、


 「テメェ、一体何しに来た・・・」


 怒鳴ろうと声を出すが、しばらくちゃんとした物を食べていなかった燈蔵の体は限界のようで、声が弱弱しい。そんな状態を見て、男は呆れたように口を開いた。

 「兄貴が妹捜さないでどうすんだよ。ほらっ、帰るぞ」


 その時、手を出そうと伸ばしてくる無心の手を大きくはたいて、

 「お前、何今頃捜してんだよ。兄妹って気づいているなら何でもっと早く捜さなかったんだよ・・・」


 燈蔵は悲しそうな目つきで下を向いて呟くように言った。それを見た無心は、

 「お前と俺が兄妹ってのが分かったのがつい昨日だぜ?捜すもなにもないだろ」

 しかし、燈蔵は俯いたまま。そんな燈蔵に無心はボリボリと頭を掻くと、何かの箱を持った手で燈蔵に突き出した。

 「ほらっ、ハッピーバースデーだ。」


 「!!」


 燈蔵の顔が上がり、視線がそのプレゼントへと移る。燈蔵は、無心が一体何をしているのか訳が分からなかった。


 「これ・・・何?」


 「はぁ?バースデーケーキだろ!お前、今日誕生日だろ?」


 強くはっきりと無心は言った。燈蔵には久しぶりのお祝いだろう。今まで施設の中にいて誰一人、彼女の誕生日を祝うものなどいなかった。
それどころか自分の存在も否定的な眼で見られている事があったため、全ての行事から彼女は外されていた。この園を潰した原因の訳でもある。

 
 彼女は自らの過去を回想し、そして今目の前にある幸福を目にする。そして、今まで誰も自分に優しく接してくれなかった人が目の前にいる。という安心感も持てた。

 
 (あ〜、私って・・・まだ不必要じゃないんだな〜・・・)


 そう思うと、彼女の目から液体が溢れる。必死に隠そうとするが目に溜まったものがポロポロと落ちていく。手で目から流れ出た物を拭うがまたそれが流れてくる。それを見かねた無心は、ポケットからハンカチを取り出して、それを燈蔵に突き出した。

 「泣くなよ・・・俺まで泣いちまうだろ」



 燈蔵は下を向いたままただ、


 「・・・ありがとう。」

 
 と言った。