二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: めだかボックス 知られざる悪平等 ( No.68 )
- 日時: 2012/09/21 22:18
- 名前: シャオン (ID: r4m62a8i)
- 参照: http://.kakiko.cc/novhttp://wwwel/novel3/index.cgi?mode
参照1000突破記念! 無心 過去の記憶編パート2
「お父さんとお母さんの仲が悪いからです」
その言葉の意味は、人吉 瞳(ひとよし ひとみ)でも理解できた。もし、無心が常人では考えられない現象を両親に見せ付けたらどんな行動を取ると思う・・・?しかも、無心の両親は彼のあの痣以降険悪な空気にある。自分は何も出来なかったし、やってあげられなかった・・・と両親は自分を責めていた。そして、月日が流れるに連れてお互いを責め合うようになるまでに発展しているのだ。
人吉医師は「そっか・・・」と小さい子供に優しい言葉で、そして、優しい微笑みを浮かべた。その人吉の笑みどこか心が癒されるものだが、感情を完全に失った無心には・・・何も感じない。
「じゃあ、今日はここら辺にしときましょう!」
人吉医師はイスをクルリと机の方に回し、今までに書いた書類をトントンとまとめた。無心と人吉医師、明らかに違う温度差。人吉医師は鼻歌を歌いながら何やら楽しそうに書類を整理しているが、無心は無表情のままその光景を見ているだけ。
「私はあなたの味方だから」
机の書類をまとめの作業を行いながら、人吉医師は無心に語りかけた。突然の事なので、無心はどう話せばいいのか分からない。無心は少し言葉を発すのに時間がかかったが、静かに口を開いた。
「味方・・・ありがとうございます。」
無心はただ一言発しただけで何の表情も見せずに答えた。そんなこんなで無心の受診はそこで終え、待合室でただ黙って待っている両親の元へと向かった。
「無心・・・どうだった?」
母親は無心の身長に合わせるようにしゃがみ、何の表情も見せない彼の顔を見た。少しの間があった後、無心は、
「大丈夫、心配しないで母さん」
無心は光と呼べる輝きが少しも見当たらないその眼で、そう答えた。無心のその状態は部屋に入る前から変らなかった。当たり前と言ったら当たり前だ。たった数十分で無心のこのような状態が一気に治ったと言うなら、とっくにここに来ている。母親は少し表情を暗くして、「そう・・・」と呟くように言った。
「帰りの途中に何か旨い物でも食べよう。お前がこの病院に初めて来た記念にな」
父親が無心の肩に手を置いて言う。父親の表情はどこか寂しげで、そして悲しそうに見える。
「・・・うん」
無心は父親の方に顔を向け、静かに頷いた。そして、父親はそのまま「さぁ、行こう」と言いながら、無心を病院の出口へと向かわせようとする。母親も何も言わずに一緒に付いて来た。だが、
「ちょっと待って、俺ちょっとトイレ行きたいんだけど・・・」
無心は両親にそう希望した。いくら感情がないとはいえ、感覚が無くなった訳ではないので、尿意に襲われる事は当たり前だ。父親が「分かった、先に行ってるぞ」と言い残して、一足先に病院を後にした。
「良いお父さんお母さんじゃないか〜」
突如、無心の背後から幼い声が聞こえた。その瞬間、病院内の空気がガラリと変った。今の季節は冬なため、病院内には暖房が効いているはずなのだが、なぜか空気がヒンヤリと冷たくなった。無心はただ黙って後ろを振り向いた。そか、無心と同い年位の女の子がそこに立っていた。綺麗に整ったポニーテールの茶髪、服装は薄いピンク色の寝巻き姿、眼は・・・無心と同じ光を失った闇しか見えない漆黒だ。
「何のようだ」
無心は無表情で少女に言い放った。すると、少女の頬がヒクヒクと痙攣みたいなことになり、
「アハハハッ、くだらないくだらないくだらないくだらない!!何が感情よ、何が家族だよ!!本当にくだらな過ぎて笑えるわ!!」
突然、少女は笑い出して、どこから得たのか分からない個人情報を使って無心を罵倒し始める。だが、無心は何も感じない。何を言われようが、何をされようが・・・何も感じない。こういう時に限って、感情がないと言うのは便利である。
「よく分からないけど、お前が何に笑えるのか知らないし、知りたくもない・・・だから早急にお引取り願う」
「ふーん、本当に感情がないのね。私が罵っても眉一つも動かさない」
少女はまるで未確認生物を見ているかのように興味深い視線を無心へと送る。少女からの痛いぐらいの視線、無心はこんな時にどんな事をすれば良いのか分からなかった。すると、少女は無心の耳元までに顔を近づけ、
「良いわ、今日はこの位にしてあげる。またどこかで会いましょ。綿柄 無心君」
少女はそう耳打ちをすると、後ろを向いてどこかの病室へと入って行った。少女がいなくなってから気づく疑問、
「何で俺の名前や家族のことを・・・」
だが、結局無心は分からず、尿意もそろそろきつくなってきたのでトイレで用を済ませると、病院を後にした。