二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: めだかボックス 知られざる悪平等 ( No.80 )
- 日時: 2012/09/25 19:44
- 名前: シャオン (ID: r4m62a8i)
- 参照: http://.kakiko.cc/novhttp://wwwel/novel3/index.cgi?mode
第二十四話 八尾図 処世
八尾図は生きていた。彼の周りに燃え盛っていた炎はいつの間にか消えている。絹氏は驚きと言うよりも興味深い表情で八尾図を舐めるように見た。
「ほう、貴殿が無能(僕たち)のスキルを使うとは予想もしていなかったよ。しかもそのスキル、赤無の物か」
絹氏は八尾図に語りかけた。
「ああ、そうだ」
八尾図は絹氏を睨んだままそう言った。すると、その言葉を聞いた絹氏の表情に笑みが零れた。その笑みが何の意味を示しているのかは不明だが、きっと微笑ましい事ではないのは確かだ。
「これは面白い。普通が無能のスキルを使うなどと言った茶番は初めてだ。一体何があったんだい?貴殿の中で・・・」
その絹氏の一言で、八尾図はさっき自分の中で起こったことを回想した。
真っ白な空間。ここの風景はこの一言で言い表せれる。周りは何も無い。人一人を除けば、見事に何も無かった。八尾図 処世がその空間をただポツンと一人だけ立っていた。
「やっぱり、俺には人を守ることなんて無理だったのかな〜」
つい、自分で呟いてしまう。彼はさっきまで人を守るために闘っていたが、あっけなく敗北したのだ。それどころか、今彼は殺されそうになっている。だが、彼は妙に落ち着いていた。て言うより、自分が生きるのを諦めていた。
「あ〜あ・・・短い人生だったなぁ・・・」
「アンタ、諦めるつもり?」
「!?」
八尾図がそう呟いた瞬間、女性の声が聞こえてきた。八尾図はバッと声のした方を向き、自分に話しかけてくる人物を見る。そこにはツインテールの黒髪、そして鋭い目つき、可愛いらしい顔立ちの女の子。そう、さっき無心と闘った赤無が立っていた。
「あれ、何でお前がここに・・・」
「それはこっちが聞きたいわ。意識が戻ったと思ったら訳の分からない白い空間にいるんだもん」
いきなり登場してくる赤無に困惑と焦りの表情が混ざる八尾図。そんな八尾図にお構いなしに「それより」と赤無はそう付け足した。
「アンタ、良いの?本当にこのままだと死ぬわよ?」
真剣な表情をした赤無が八尾図に問いかけた。さっきまで複雑な表情をしていた八尾図の表情が一気に曇り、そして俯いてしまった。
「良いんだよ・・・人を助けられないなんて、いてもいなくても同じだよ」
「そう、分かったわ。」
赤無は素っ気ない返事をして、振り向き、足を進めた。しかし、その足は数歩で止まった。
「無能である私がアンタに言うのもどうかと思うけど、それでもアンタ・・・人間?」
その時、八尾図の表情が固まった。彼女が何を言っているのかもよく分からないがそれよりも、人間?と初めて言われた言葉に驚いて口を動かすことを忘れてしまっている。
「・・・どういうことだよ」
何とか言葉を放つことに成功した八尾図だが、振り向いた彼女の表情にまた言葉を失ってしまう。
赤無が泣いていた。
「アンタが・・・これまでどういう風に人生を・・・生きてきたのは・・・分からないけど、こんな最後・・・悲しすぎる!」
涙声で言う赤無 泡名。彼女は優しい無能だった。人を思いやれる反面、過去には彼女なりの壮絶な人生がそこにはあった。今、こうして八尾図のために泣いているのも彼女の優しさだ。赤無はまた後ろへと身体を向け、足を進める。その時、
「誰が最後を送るってぇ!!?」
大声が聞こえてくる。勿論、それを放ったのは・・・八尾図だった。
「誰も俺が最後を送るって言ってねぇぞ!さっき言ったのは、俺の家にいる犬のポチの事だ!ついこの前に死んだんだよ!!」
「ちなみにお前が言った『アンタ』は『ポチ』って聞こえただけだぞ!?」と焦った声で、笑いながら自分の事を必死に自分の家にいるポチに擦り付けた。何はともあれ、八尾図に今までの調子が戻り、再びやる気が出たのは確かのよだ。赤無は立ち止まり、
「あっ、そう!」
と振り向き様に微笑みを浮かべながら言った。
元の調子に戻った八尾図はこれからどうあの無能を倒すのかを頭を抱えて試行錯誤している。それに赤無も加わった。
「あの野朗をどう倒すのか考えたんだけど。やっぱり不意打ちかな〜」
「いいえ、彼の無能、「爆弾仕掛けの虚体」で、仮に不意打ちに成功してもそのスキルで自分を攻撃をした者を粉々に吹っ飛ばすわ」
そんな絶望的な言葉を聞き、「あ〜くそ!」と頭をクシャクシャにする八尾図。しかし、赤無にはまだそんなことは想定の範囲内とでも言いたいのか、余裕の表情を見せている。
「私に良い考えがあるわ」
「本当か!!」
さっきまで暗い表情で考えていた八尾図の表情が一気に明るくなった。
「私のスキルをアンタが使うのよ」