二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: めだかボックス 知られざる悪平等 ( No.93 )
日時: 2012/10/01 00:42
名前: シャオン (ID: r4m62a8i)
参照: http://.kakiko.cc/novhttp://wwwel/novel3/index.cgi?mode


 第二十九話 闘い 


 ピト、ピト、と赤い液体が地面に落下する。その液体の出所はサバイバルナイフで掌を貫かれた無心の右手だった。さっき少女が無心に襲いかかった時、彼女はサバイバルナイフをどこらか取り出して、無心に向けて突き出したのだが、無心は、瞬時に右手を出してそのナイフを受け止めたのだ。さっきの大声と打って変わって、少女は無心に対して笑顔を見せ、

 「お久しぶり、綿柄 無心君 。三年ぶりだねぇ・・・えーと、久しぶりの人に会ったときの言葉は・・・彼女出来たぁ?」

 と少々苦痛の表情を浮かべる無心に意気揚々と話しかけた。

 「久しぶりだなぁ・・・綿柄 燈蔵(わたがら ひぐら)。ちなみに俺には彼女はいないぞ。・・・そう言うお前こそ彼氏は出来たのか?」


 その時、燈蔵と呼ばれる少女にある変化が見られた。次第に表情が強張っていき、そして口を開いた。

 「私をそんな名前で呼ぶな!私はただの燈蔵だ!そんな薄汚れた名字なんかで呼んでんじゃねぇ!」

 燈蔵の怒号が廊下全体に響き渡った。握っているナイフに力が入る。無心もそれを感じたのか少し表情を歪ませた。そして、無心を苦しませるもう一つの現象が彼を襲う。

 「!!」

 トラウマによるあの発作だ。しばらくは、精神安定剤などを使用して、何とか抑えていたが、この少女の出会いをきっかけにトラウマがまた彼を襲った。

 「そうか・・・そうだったな」

 必死に発作を押し殺して、普段どおりの表情を見せた。

 「お前を探すのに案外苦労したよ・・・。前居た高校に行ってみると転校しましたって教師が無表情で答えて、それから私は色々な学校を探しまくった。それで私は思いついた。お前が来る所と言ったらここしかないってね・・・」

 燈蔵は無心の顔を睨みつけながら、憎しみを込めるように丁寧に語っていく。だが、無心にはそんな事を聞いてる暇が無い。ナイフによる痛みもあるが、発作が何より無心を苦しめていた。緊急用にいつでも取り出せれるようにズボンのポケットに薬はしまってあるのだが、燈蔵が目の前にいて取り出せない状態だ。


 「お前の長話にも付き合っていたいけどよ・・・そろそろ俺も限界・・・!」

 「!!」

 そう無心は呟くように言うと、ナイフを自分の手から引き抜いて燈蔵の横腹めがけて回し蹴りをした。しかし、すでにそこには彼女の姿は無くいつの間にか10m位前に燈蔵は眉をひそめてこちらを黙って見ている。無心は今のうちと言わんばかりにポケットから薬を取り出して、口に放り込んだ。すると、無心は容態が良くなったのかさっきに比べ大分表情が落ち着いていた。

 「そう言えば・・・お前とこうして向かい合うのも三年ぶりだな・・・」

 無心は両腕を組んでそれを前へと突き出し、筋を伸ばした。まだ、無心も完全に発作が収まった訳ではない。未だに燈蔵がここにいることに動揺している。そして、無心の頭の中から少なからずだが過去の記憶がフラッシュバックのように流れてくる。

 「そうだね・・・三年前、初めてお前と闘った時、ここに私はお前の呪いを受けた!」

 
 「!?」


 燈蔵はそう言うと、自分の制服の上の部分を腹部の所だけめくった。そこには真っ黒なシミのような物が彼女の腹部全体に広がっていた。まるで、零したインクが真っ黒に滲んだかのような色合いだ。その時、無心は思った。

 (あのシミは一体・・・?しかも、俺がまだまともだった頃に発症したあの痣と似てる・・・)

 ここで謎が生じた。無心には燈蔵の痣を付けた覚えがない事と、その痣は昔、無心が発症したことのある謎の痣だということ。だが、無心に考えている暇は無かった。

 「だから・・・復讐しに来た!!」

 そう言い終えると、燈蔵はどこから出したか分からないナイフを数本無心の方へと飛ばした。無心もこれに対応する。


 (「悪戦苦闘リグレットスタイル」)


 無心の方に飛んできたナイフが突如軌道を変え、四方八方へと飛んでいった。それを見た燈蔵は軽く舌打ちをし、またナイフを飛ばした。さっきと同じように無心は「悪戦苦闘リグレットスタイル」を使い、難なく防いだ。その時、

 「!!」

 気が付くと、燈蔵は無心の真横におり、サバイバルナイフを両手にすでに無心を殺りにかかろうとしている。無心は少し焦った。「悪戦苦闘リグレットスタイル」は一回発動すると、次に発動できるのが3秒後。つまり3秒の間、無心には身を守るスキルがないと言うことになる。それを知ってか知らずか、燈蔵はすでにナイフを突き出していた。

 (あっ、やべ!)

 無心は咄嗟に冷たい廊下の床に伏せた。いきなり目標が消えたため燈蔵は何の行動も起こせず壁に突っ込んだ。


 ドォン

 ガラガラ

 燈蔵は上半身だけ壁に突っ込んで下半身だけが出ている状態だ。そして、彼女が突っ込んだその場所は粉々に粉砕され、瓦礫がゴロゴロと転がってくる。そんな様子を見て、無心は静かに言った。


 「あまり兄貴をなめるなよ、燈蔵」