二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: その女、情報屋につき。 【ONEPIECE】 3話更新。 ( No.10 )
- 日時: 2012/12/31 09:05
- 名前: 麒麟 ◆kWzP/lVDhA (ID: 6xS.mLQu)
「ふむ。スペード海賊団のポートガス・D・エースについて、ですか……。最近名を轟かせている若い海賊ですね。何でも七武海の勧誘を蹴ったとかで、三日前の新聞に載っていたのを覚えています」
そう言うシヅキの片手には、“火拳のエース”の手配書が握られていた。少しばかり癖のついた黒い髪、健康的な肌に映えるそばかす。シヅキは一度だけ、エースを見たことがあった。
あれは、冬島でのことだ。冬島に滞在する赤髪海賊団に、スペード海賊団が接触を試みたのだ。最初は何事かと思ったのだが、気配を殺して話を聞いてみれば、“ルフィ”という弟についてだった。
赤髪もエースも、ルフィのことを好いているらしく、暫く麦わら帽を被っているらしい彼の話題が続いた。
“ルフィ”という名は聞いたことがないのだが、どうやら海賊を目指しているらしく、麦わら帽子は赤髪から授かったものらしい。「いつか、立派な海賊になったら、返しに来い」と。
記憶を辿りながら、シヅキは目を細めた。それにしても、「ポートガス」か。前にも一度だけ、その名を聞いた。
——「ポートガス・D・ルージュ」
さてはて、エースが、ルージュの血縁者であることは間違いない。ルージュの弟という線はないに等しい。約20年前、海軍に、「ゴール・D・ロジャー」の調査を頼まれたときに、それは証明されている。つまり——、いたのだ。ロジャーとルージュが、命を懸けて産んだ子供が。
——それが、ポートガス・D・エース。
シヅキは、ちらりと横で寝転ぶコタローに目をやった。コタローも気づいたようで、ニヤリとニヒルに笑っている。
「——任せてください」
シヅキは、白ひげを見上げて、
「明日までには、深い情報を掴んでみせます」
と、言った。
「グラララ! じゃあ、頼んだぞォ!」
『ったりめーだろーが』コタローが、得意気に笑う。『おれたちをなめんなよエド!』
「はいはい、コタロー。もう帰りますよ。火拳の情報には個人的にも興味がありますからね」
白ひげにじゃれつくコタローの首根っこを掴んで、シヅキは踵を返した。途端に、ドロンと音が響いて、雲のようなものがシヅキを覆う。それに警戒した隊員たちが身構えるが、白ひげはそれを宥めて、目を細めた。雲が引くと、そこにシヅキはいなかった。
「はっ……!? ど、どこいったんだ……?」
と、慌てたように叫ぶ隊員を横目に、白ひげは豪快に笑う。
「グラララ……! 相変わらず、不思議な術を使う女だ……!」