二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: その女、情報屋につき。 【ONEPIECE】 2話更新。 ( No.9 )
- 日時: 2012/12/30 14:15
- 名前: 麒麟 ◆kWzP/lVDhA (ID: 6xS.mLQu)
『オイ。依頼だぜェ』と、パートナーである忍犬のコタローが言った。シヅキとコタローは今、海軍から支給された小船に乗って、どこまでも広がる青い海を旅していた。
普通ならば、偉大なる航路を小船などで渡るというのはかなり危険なのだが、“ニンジャ”であるシヅキには関係のないことであった。その上、シヅキは賞金首などではない。確かにシヅキは、海賊と接点はあるのだが、彼女の存在は海軍にも必要不可欠なのだから、その首に賞金を懸けるだなんて以ての外だった。
「依頼ねえ。誰からですか?」
シヅキは、考えるような素振りをした後、
「もしかして、エドさん?」
と、コタローに尋ねた。
『ああ、正解だ』コタローは、そのつぶらな瞳を細めて、自らの尻尾を真横に振る。『エドは半年に一回の割合で依頼してきやがるからな』
柴犬の身でありながら、挑発するようにニヒルに笑ったコタローを視界におさめながら、シヅキは苦笑を浮かべた。そして、自らの懐の中から、ある一枚の紙切れを取り出すと、それを懐かしげに眺めた。
「エドワード・ニューゲート。最強の、男からの依頼ですよ。気を引き締めていきましょう」
紙面には、白い豪快なひげを蓄えた、最強で最凶の男の姿が映されていた。
——
「グララララ……! そろそろあいつが来るぞォ! 宴の準備をしろォ!」
どっしりと、その常人よりも大きな身体を椅子に預け、男は豪快に笑った。ここは、白ひげ海賊団の、モビー・ディックと呼ばれる船の中。その船長、白ひげことエドワード・ニューゲートを慕う“息子たち”は、いそいそと宴の準備に取り掛かり始めた。
「オヤジ。あいつってもしや、“黒い蜘蛛”のことかい?」
奇妙な髪型をした男——名をマルコという——が、白ひげへと問いかける。すると、白ひげは、まるで鐘のごとく低く響く声で笑った後、片手に持った瓢箪の中身をごくごくと飲み干した。そして、“銘酒”と大きく達筆で書かれた瓢箪が、用済みだというように木でできた床へと投げられる。
「“黒い蜘蛛”か……。そういえば、そんな名もあったなァ! だが、あいつは大の虫嫌いだからなァ、普通に“シヅキ”と呼んでやれェ!」
「——わかったよい。久しぶりだなァ、半年ぶりだったかい」
「あァ」白ひげは、懐かしむように空を見上げた。「もうそんなに経つのか」
白ひげとマルコが、シヅキとの思い出に浸っていると、なにやら外が騒がしくなった。
「何だ!?」
「敵か!?」
「急にでやがった!」
「“黒い蜘蛛”じゃねェかありゃあ!」
と、叫び声。
どうやらいずれもこの半年の間に入った新人の声であるようだ。ならば、無理もない——。彼らは、シヅキのことを知らないのだから。
マルコは、そこまで考えて、苦笑を浮かべた。ここは、一番隊隊長である自分が治めなければならない。やれやれと、騒動の中心である場所へと向かわんとするマルコの背を見つつ、白ひげは言った。
「来やがったか……! シヅキ……!」
“エドさん”と笑う娘を、思う。
「エドさん、お久しぶりです」
『ケケケ、エド、半年ぶりじゃねェか』
白ひげは、笑った。