二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナgo】少年たちのRhapsody ( No.11 )
- 日時: 2012/09/08 23:24
- 名前: 葉月 (ID: eldbtQ7Y)
【第4話・異能力】
「神童先輩!一体どこに行くんですか!?」
「黙ってついてこいって言っただろ!?あいつらに見つかるとやっかいなんだ……!ってなんでお前は俺の名前を知ってるんだ?」
上ずった天馬の声に、いつにもまして早口でまくしたてる神童。
彼の足は、どんどん加速していっている。
「えっと……そん、し、神童先輩って有名だから……」
言い訳が見つからず、天馬は苦笑を浮かべながら言った。
しかし、神童は気にせず「そうか……」と呟いた。
そして天馬のほうを振り返ると、眉を寄せて口を開く。
「あのさ、『先輩』はやめろ」
「え?何でですか?」
小首をかしげる天馬に、神童は「はぁ……」と小さく息を漏らした。
「俺は今日初めてお前と会ったんだ。何も教えたわけじゃなければ、尊敬される義理もない。神童でいい」
「な、む、む、無理ですよ!」
天馬は神童の手を振り払う勢いで、両手を顔の前で左右に振った。
神童は怪訝そうに顔をしかめ、再び口を開く。
「安心しろ。俺はお前を信用したわけじゃない。別にお俺と関わりたくないという意見もあるだろうから」
「そういうわけじゃないですっ!」
天馬は神童の言葉をさえぎるように叫んだ。
神童は一瞬驚いたように目を見開き、すぐさまハッとしてあたりを見回す。
その時だった。
「見つけたぞ!神童拓人!」
ガサガサっという草木を分ける音と共に、甲冑を身にまとった少年が現れた。
その後ろにはたくさんの人々が、同じく甲冑姿で身構えている。
少年は二つに結った桃色の髪を揺らし、その碧眼で神童を睨みつけていた。
女の子のようなかわいらしい顔立ちなのに、覇気のある男らしい迫力。
少年は甲冑のほかに、オーラをまとっているようにさえ見えた。
「霧野先輩……」
少年を見つめ、天馬は呟いた。
そう、少年は霧野と瓜二つなのだ。まるで神童の時のように。
ただ様子がおかしい。神童と霧野は天馬の記憶上、とても仲のいい幼馴染だったはずだ。
この時は真逆で、いがみ合っているようにしか見えなかった。
一定の距離を保ち、じりじりとにらみ合っている。
霧野の部下のような人間たちは、彼に合わせてじっと様子をうかがっていた。
「なんで……霧野先輩が……」
天馬は不安げに言った。
しかし、その小さな呟きは神童と霧野には届かなかったのだろう。
静まりきり、時を止めているような空気。
そんな空気を最初に破ったのは霧野だった。
「……さあ、おとなしく来てもらおう。罪は償ってもらうぞ」
奥歯をかみしめる神童に、霧野は冷たい声を投げかけた。
天馬は思わず「罪……?」と漏らす。
彼の視線の先の神童は、悔しげに肩を震わせていた。
「うるさいっ!俺は……俺は奴隷を解放しただけだ!」
神童は霧野を怒鳴りつけた。
そして襟巻の中に右手を突っ込んだ。
途端に霧野の顔異色が悪くなる。
先ほどまで強気な表情を浮かべていたのに、慌てたように顔をしかめたのだ。
「お前ら!神童を止めろ!」
霧野の怒声に、甲冑姿の人間たちは飛び上がるように走り出す。
しかし、神童は一枚上手だった。
エリマキで隠れていた、淡い紫色のロケット取り出し素早く開けた。
そして挑むように声を張り上げる。
「来い!奏者マエストロ!!」
「……なっ……!」
天馬は驚愕に瞳を揺らした。
ロケットから強烈な光が輝き、瞬時にそれは現れたのだ。
神童の化身、奏者マエストロが。