二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナgo】少年たちのRhapsody ( No.12 )
日時: 2012/09/12 20:55
名前: 葉月 (ID: eldbtQ7Y)

【第四話・異能力】


「……小さ……」

天馬は思わずつぶやいた。
その視線の先には奏者マエストロがいる。こうこうとした光を放つ威風堂々とした姿の。

しかし、大きさが異常だった。
天馬の知っている化身。3mなど軽く超える大きなものだ。
だがこのマエストロは30cmほどしかない。
ロケットの上に立っているようにさえ見える。
普段の堂々たる姿とは似ても似つかなかった。

「……っ」

その時、霧野が自らの胸の前にこぶしをもってきた。
一瞬だけ妖艶な笑みを見せる。
誰もが見惚れ、誰もが羨む美しい笑み。
そしてその拳をゆっくりと、神童や天馬に向け開いてみせた。
どこかで見たような動きに、天馬が思わず近寄ろうとしたその時だった。

「ディープミストッ!」

霧野が勢いよく言ったと同時に、白い霧が溢れだした。
神童と天馬の視界を遮るそれは、まぎれもなく霧野の必殺技だ。

「……逃げられたか」

神童はぽつりと言う。
だんだんと薄れていく霧の中、目を凝らした天馬の視線の先に、すでに霧野たちの姿はなかった。

「霧野先輩がこんなあっさり逃げるなんて……。追って来たがわなのに……」

あまりにあっさりと撤退した霧野に、天馬は驚きの声を漏らした。
それに対し、神童は眉を寄せる。

「先輩?お前、あいつと知り合いなのか?」

怪訝そうにそう言って、警戒の色を見せる神童。
そんな彼に、天馬は慌てて顔の前で両手をを振った。

「い、いえ!神童……さんの聞き間違いです!神童さんこそ霧野さんとは幼馴染じゃないんですか?」
「は?馬鹿を言え!。あんな奴と俺を同等に扱うな!」

鬼のような形相で、神童は声を張り上げた。
見たことのないその姿に、天馬は思わず言葉を失う。
神童はイラただしげに顔を歪め、再び口を開いた。

「霧野の……あいつの撤退は正しい。だってあいつは偽物だからな」
「に、偽物?」
「ああ、あいつの能力は偽物だ」

天馬は神童の言葉を復唱した。
神童はゆっくりと頷く。

「俺のさっきのは……能力を封じ込めたロケットだ。開けて名を呼べば、精霊と化した能力が現れる。俺はマエストロ。簡潔に言えば『コンダクター』だ」
「コンダクター……」
「霧野は能力をまだ持っていないはずだ。ロケットを見たことないからな。あいつは人工的に能力を体内に入れてるんだと思う。暗号名は確か……『ミスト』だ。きっと霧の異能力だろう」

神童はそれだけ言うと天馬に背をむけた。
青い空を仰ぎ、目を細める。

そして小さな声で言った。

「偽物は……本物には勝てない」