二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナgo】少年たちのRhapsody ( No.13 )
- 日時: 2012/09/22 22:52
- 名前: 葉月 (ID: eldbtQ7Y)
【第五話・使命】
青く広がる空を見つめ、小さな声を発する神童に、天馬は申し訳なさそうに言った。
「あの……俺わかんなくって。もう一回説明してもらってい」
天馬は続きの言葉を飲み込んだ。
いや、飲み込みざるを得なかった。
突然、何もかもを包む強烈な閃光が走ったのだ。
あまりのまぶしさと驚愕に、天馬は声も出せずに目をふさいだ。
しかしそれは一瞬のことで、すぐさま瞼の裏は暗闇なる。
「……っ。なんだったんだ今の……!」
天馬は眉を寄せ、瞼を開ける。
そしてハッとしてあたりを見回した。
額に汗がにじむのがわかる。
「し、神童先輩!?どこに行った……?」
そう、神童がいないのだ。
とっさのことでつい先輩呼んでしまったが、求められたその姿はどこにも見当たらない。
それどころか、広々とした森の中で、小さな息遣いさえ感じられなかった。
「ここにはいませんよ」
凛とした静かな声に、天馬は振り返る。
彼の視線の先には、金髪に碧眼の美少女が立っていた。
「I……!」
「こんにちは、天馬君。どうですか?ラプソディーの世界は」
「どうですかもなにも……」
天馬は口ごもり気まずそうの眼を泳がせる。
「悪いけど……どうしていいか全然分かんないんだ。神童先輩もいなくなっちゃったし、化身もなんかおかしいし、霧野先輩も……!」
「安心してください」
不安気な天馬の言葉に、Iは表情を変えずに口を開く。
「ここに神童拓人がいないのは、私の存在できる別次元だからです」
「……?」
「とにかく、私はここの登場人物と会うわけにはいきません。なので、私がここに表れるとき、彼らはここから姿を一時的に消します」
「け、消す!?」
「はい。ただ存在が消えるのではなく、単に時が止まって見えなくなるって感じですね。私が戻れば元に戻るので問題はないですし」
天馬は安心したように「そうなんだ……」と声を漏らした。
そしてすぐさま声を上ずらせる。
「っていうか、俺状況が全然読めないんだよ!」
「ああ、すみません。天馬君は『習うより慣れろ』ってタイプだと思いまして」
「まあ……否定はできないけど……」
天馬は苦笑を浮かべた。
Iはそれに合わせたようにフッと妖艶な笑みをみせる。
「ここでのあなたの役目は、物語を元に戻すことです」
「もとに……戻す?」
「ええ。今この物語は壊れています。本来の意味から遠ざかり、登場人物たちを苦しめている。あなたは彼らを、物語を進めることで開放しなくてはいけないのです」
Iは当たり前のようにそう言った。
変わらない、淡々とした口調のまま。