二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナgo】少年たちのRhapsody ( No.18 )
日時: 2012/10/01 18:20
名前: 葉月 (ID: eldbtQ7Y)

【第六話・テスト】


「あの……俺も連れて行ってください!」
「は?」

突然の天馬の言葉に、神童は間の抜けた声をだした。
ぽかんとした表情で天馬を見つめている。

「お前……今なんて言った?」
「いや、だから俺も連れて行ってください」

一方、真剣な顔をして神童を見据える天馬。
神童は呆れたような溜息を洩らした。

「そんなの無理に決まっているだろう?いいか、俺は自分たちのやっていることが間違いだとは思わない。だが、追われていることには変りなんだ。一般人を巻き込むわけにはいかない」

神童の主張に天馬は一瞬俯いたが、再び顔を上げた。

「俺……一般人じゃないんです!」

そして、先ほどIから受け取ったものを神童の前にぶら下げる。
それを見た神童は、驚愕に声をあげた。

「ロケットだと……!?松風、お前……」
「はい、俺も能力使えます。足手まといにはなりませんから」

自分に対して不安はあるものの、天馬は力強く言った。
神童も天馬の能力の件について聞き、気が変わったのだろう。
少し考えるようなそぶりを見せた後、小さく頭を動かした。

「……わかった。ただし、俺一人で決めるわけにはいかない。ついてこい」

それだけ言うと、身をひるがえし歩いていく。
天馬も慌ててそのあとを追った。

                  *

2時間ほど歩いただろうか。
いまだ続く森の中で、天馬は神童の背中を見つめた。
先ほどから一切の会話はなく、小さな風の音や葉のこすれる音がうるさいほどに感じる。

(どこまで行くんだろう……)
「松風」

天馬がそんなことを考えているとき、ふいに神童が口を開いた。

「は、はい」
「お前と会った時、俺の状態は危険だったんだ」

突然の言葉に、天馬は唖然とした様子を見せた。
神童は、振り返ることも止まることもせずに話を続ける。

「俺は奴らに追われていた。一部の奴隷船を壊したからな。逃げてはいたものの、この森まで奴らはついてきた」
「……はい」
「……この森の奥に、俺たちのアジトはある。そして……」

神童はいったん言葉をとぎった。
そして無言のまま目の前を見つめる。
そこは、大木が倒れていて、道がなくなっていたのだ。

「あの……これ、進めないんじゃ?」
「これの先が俺たちのアジトなんだ」

神童はそう言うと、ニヤリと口角を上げた。

「さすがに、2時間で着く場所まで追われたのは不覚だったよ」

苦笑を残し、天馬を見据える。

「今から俺のマネをしろ。これぐらいの身体能力はないと困るからな」
「へ!?」

驚く天馬をよそに、神童は大木の傍にある木の枝に手をかけた。
次に、勢いよく地面を蹴り飛ばす。
砂ぼこりがたったと同時に、彼の体は宙へと舞った。
そして気を掴んでいた腕で体を引き寄せ、今度はその木を強くける。
凄まじいキック力があるのだろう。神童はそのまま大木を飛び越えた。

「……すごい……!」
「いいか!俺と同じ方法でこの大木を超えろ」
「お、同じ方法ですか?」

上ずった声を上げる天馬に、神童は大きな声で返す。

「これはテストだ!チャンスは2回、できたらアジトに入れてやる!」