二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナgo】少年たちのRhapsody ( No.7 )
日時: 2012/08/24 22:44
名前: 葉月 (ID: HTIJ/iaZ)


【第二話・入り口】


「俺の歩める未来?」
「ええ」

小首をかしげる天馬に、Iはうなずいた。
そして何の躊躇もなく、見ていたページを破く。
びりびりっという音にたいし、天馬は驚きと困惑の表情を浮かべた。

「だ、大丈夫ですか?やぶっちゃって……」
「大丈夫です」
「でもなんか高そうだし」
「……特に問題ありません」

Iはそれだけ言うと、今度は破ったページを空中に放った。
ヒラヒラと揺れながら落ちてくるそれは、突然まばゆい光に包まれる。

「うわっ」

天馬は思わず両腕で目をふさいだ。
そしてそっと腕をどけ、その瞳を驚愕に揺らす。

「な……!なにこれ……」

天馬の目の前に広がっているのは、さっきのページだ。
しかし、大きさが全然違った。
もともと大きな本であったが、今彼の目の前にある紙は、少なくとも縦2メートルはあるであろう大きさだった。
天馬よりもはるかに大きい。

そしてそこには無数の文字が書いてあった。
英語で題名が書いてあり、その下にあらすじのような短い文章が並んでいる。

「ラ、ラプ」
「ラプソディー」

ぎこちなく言葉を発する天馬に、呆れたようにIは言った。
天馬は苦笑を浮かべて彼女問いかける。

「えーっと……意味は?」
「狂詩曲です」
「狂詩曲……」

天馬は思わず、Iの言ったことを復唱した。
なんとなくだったが、楽しいものとは思えなかった。

「ラプソディーは自由な形式によって楽想を展開する器楽曲です。音楽自体は愉快なものですよ」

そんな天馬の様子に気づいたのか、Iは静かな声で呟いた。

「そうなんですか!よか」
「まあ所詮は狂詩曲なんですけど」
「……ところでこれどうするんですか?」

再び冷たく言い放ったIに、天馬はあきらめたように聞いた。
Iは思い出したように「ああっ」と声を漏らす。

「すみません。説明忘れてました」
「ちょっ……忘れないで下さいよ!」

慌てた声色の天馬。
Iはそれを気にせず、碧眼をまっすぐ彼に向けた。
美しい澄んだ瞳に見据えられ、天馬は思わず目を背ける。

「あなたには……この物語に入っていただきます」
「物語に……?」
「ええ。物語といっても、あなたの現実にリンクしていない日常ですがね」
「……あの、そういうことですか?」

訳のわからない説明に、天馬は小首をかしげる。

「だから……簡単に言えば魔法とか出てくる可能性もあるんですよ」
「魔法!?」
「もちろん、ない確率のが高いですが」

声を荒げて身を乗り出す天馬に、Iは修正をいれた。
そしてゆっくりと巨大なページ近づき、それに白い手をかざす。

すると先ほどとは違う、淡い水色の光が溢れだした。
Iのワンピースがバタバタとはためく。

「これは……?」
「物語への入り口です。さあ早く!」
「うわっ」

Iは突然声を張り、天馬の腕を引っ張った。
細見の彼女からは信じられない力で、天馬は勢いよくページの上に足を踏み入れる。

その瞬間、Iはページの遠くへと飛びのいた。

「私もたまには様子をうかがいに行きます。頑張ってくださいね」
「えっ!ちょっ、どうなって……!」

天馬は思わず、Iに手を伸ばした。
しかし、その手はIには触れずに中を掴む。

「あ……」

天馬が顔をしかめたと同時に、彼の目の前は真っ暗になった。