二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

a title[サイケデリック・ホスピタル] ( No.3 )
日時: 2012/08/15 18:19
名前: 蒼月律零瑠 (ID: DkN/A4kL)
参照: 花って英語に直すとカッコいいよね←

まただ。
また俺は〝其処〟に居る。これで何度目だろうか。
目が覚めれば声を出しても己の耳に届く事無く、自分の手足・空間さえ見えない真っ暗闇の空間に必ずいるのだ。
宛ても意味も無く只彷徨彷徨い続ければ突然の鮮明な光が俺の目を眩ます。
フラッシュバックで行き着く場所は——————————



「———…ま。『松風天馬』。 病名『キ*ガイ』。 状態は『異常』、ね」

フラッシュバックで必ず行き着く場所は〝精神科〟。
壁や床、机や椅子が真っ白くて、周りにあるものは俺のカルテと怪しく光る液体の入った注射器のみ。
オマケに、非現実なのに鼻を突くような薬品と鉄の臭いがする。嗅ぐだけでも吐き気を促すところだが何度も〝見ている〟ので少し慣れている。
慣れる事って恐ろしいな。

「せんせ、い…」
「手を尽くさないとならない異常さですからねぇ。 入院期間は100年掛かるでしょう」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤだイヤいやだイヤダイヤダイやダイヤダイヤだ嫌だ——————————」
「—————黙れ植物野郎。 御前みたいな廃人なんかに与えられた安楽の地なんて無いんだよォッ! 廃人は大人しく此処で指をしゃぶってなァッ!」

〝廃人はテメェの方だろうが下衆野郎…〟
なんて口に出したいが思い通りに開き動かない。
見飽きたヤブ医者の浮かべる笑みを只只見詰めることしか出来ない。
夢の中で上手くいかない事ってよくあるもんね。
またフラッシュバック現象が起こり漸く糞野郎とオサラバ出来たが、安心するのはまだ早い。
何故なら次に辿り着いた場所は——————————



「それでは、松風天馬様のイカれた脳内の手術を始めましょう」

手術室だからだ。
何時の間にか束縛着に変わっていて、更に足掻けないようベルトでしっかり固定され、頭にはロボトミー用の器具『頭部穿孔』が装着されている。
ちょっとここでロボトミーの説明を教えておこうかな。
何て言ったら良いのか分からないけど、簡単に言えば頭に穴を開けて手術する事だよ。

「ハッ、この餓鬼スッゲー怯えてやがる。 滑稽な面してんなぁ」
「あッ、あぁああ……………あぁッ…」
「残念だったなぁ。叫んでも誰も来ないぜぇ? そんじゃ手術イッキまぁーす」
「ッヒィ…!?」

ハンドルがキュルキュル回ると同時に頭部穿孔の尖った針が真下へ降下してくる。

「たすけッ、助けてよォ…!」

針が後頭部と接触した瞬間、またフラッシュバックが起こる。
何度同じモノを見てもパターンさえ分かれば少し安心出来るよねって、ロボトミーでビビッてた俺が言う台詞じゃないけどさ。



場所は保護室。
束縛着がつけられたままなので上手く動けないが扉が開いていたので何とか頑張って其の場から脱出する。
今度は人が全く居ないので難なく突破出来る。
あと少し。あとちょっと。全力疾走すればもう出口。
根暗な病室、ムカつくヤブ医者、そしてキンキンに冷え切った石灰タイルともオサラバだ。
白く光る出口に飛び込めば——————————



「———着いた」

あっと言う間に俺の家。
太陽の光が俺の腹に照りつけ、外から聞こえる鳥の鳴声。
また新しい一日を過ごし、またあの陰気臭い夢を見る事になるだろう。




another title/[悪夢なんてよくあることさ]