二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [イナイレ]-プリンスのDNA ( No.123 )
日時: 2012/11/01 18:44
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第二十八話 『友を捨てる決断』

外部には一切出していない情報−オリビアが須藤につけ狙われていること−を不動が知っていたというだけで、プリンス四兄弟は気が動転してしまっている。

「明王君…どこまで、知ってはるの……?」
「ほぼ全部ですかね。
優樹菜の携帯をハッキングして電話をかけてくる。
ストーカーは須藤幹太って名乗ってるけど、本当は蜷川大輔だってことも」
「「「え…!!?」」」

実、シュリアンヌ、将は頭が真っ白になった。
蜷川がそんなことをするはずが…

「大輔……様が………!?」

オリビアは何も信じられなくなった。
蜷川が自身にストーカー行為をするなど、断じてあり得ないと思いたい。
だが…ないとも言い切れない。
でも、嘘だと思いたかった。

「嘘を申せ……」
「あぁ゛?」

不動が眉根をぴくっと寄せる。
オリビアは不動の胸ぐらをわしづかみにし、怒りの形相を浮かべる。

「嘘を申せと言うておる!!大輔様がわらわの命を狙うことなど、到底信じられたものではない!!」
「だったら他に可能性のある奴いんのかよ!!?あいつはおれ達と決別したんだぞ!!てめぇを狙う理由なんざ、いくらでもある!!!」
「………!!」

オリビアは、あの時の蜷川を思い出した。
純粋にサッカーを楽しんでいた頃のさわやかな笑顔とはかけ離れて、何の色も浮かべない蜷川を。
勝利だけを追い求め、固執するあまり、決別してしまった蜷川を。


『お前ら、おれのことを正義漢だっていったよね?だとしたらおれに敗北はいらない……。






———勝者だけが正義だ』


不動の言葉であの時のことを思い出したオリビア。
自然と腕の力が緩くなり、不動の胸ぐらをつかんでいた手はだらんと下ろされた。
実、シュリアンヌ、将は、"愛媛の三戦強"の間に何があったか知っている。
知っているが故に声が出せなかった。

「明王、大輔の居場所はわかるか?」
「木戸川にいるらしいです」

見れば、オリビアは紫の両眼から大河のように涙を流している。

「バカ野郎……」

不動はオリビアに背を向けた。
泣きそうな顔を見せまいとする彼なりの男としての意地だった。

「泣くほど悲しかったら、さっさとあいつをぶっ飛ばしてくるぞ!!」

嗚咽を繰り返すオリビアに不動は叫ぶ。
鼻水に、よだれまで垂らしてオリビアは泣く。
涙は止めどころを知らずに流れ落ちて、あふれてくる。
オリビアの胸の内で、何か固い意志ができた。

「当だり前じゃ!!!」

人生でたった一度きりの友を捨てる決断を、不動とオリビアは下した。