二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [イナイレ]-プリンスのDNA ( No.127 )
日時: 2012/11/03 11:29
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第三十一話 『不動、弱さを見せる』

「そんなことがあったんやな……」

シュリアンヌが真剣に話を聞いてくれたおかげで、不動の心は少し晴れた。
浜崎が死んだことで、蜷川が勝利だけを求め、オリビアがサッカーを嫌いになったり、自分が強くなることだけを意識するようになったことと、あまり人に聞かせたい話ではなかったが、心のどこかでは誰かにすがりたかったのかもしれない。
オリビアも、きっとそうだったろう。
蜷川をこの場に居合わせてやりたかった。

「また酷なこと聞くけど……」

シュリアンヌは銀のかんざしを外した。
髪を少しばかり揺らし、そのかんざしをテーブルに置いた。

「媛莉が死んでもうたことと、みんなが離れていったんと何の関係があるん?」


また思い出してしまった。

『優樹菜!!』

悲痛な声でオリビアの日本人ネームを叫んだ媛莉を。

「浜崎は…試合中に起こった事故でなくなりました。優樹菜を……かばって…」
「………!!?」

シュリアンヌは目を普段の数倍にも見開いた。

「おれ達が中一の時に所属してた"ソワジュール"は全国大会で準決勝まで勝ち進みました。
けど…決勝で負けが確定したときに相手のFWが放ったシュートが、優樹菜を直撃しようとして、浜崎はベンチから走ってきて優樹菜を突き飛ばしたんです…!
浜崎のいち早い行動で優樹菜は今も選手として機能しています。
ですが、相手選手が放ったシュートは……浜崎の……頭にぶち当たった……!!」

もうこらえきれず、不動はついに涙をあふれさせた。
でも泣き顔は見られたくなくて、俯いて、目を両手で覆った。

「すぐ浜崎は病院に運ばれましたが、頭蓋骨が砕けていて助かりませんでした……!!
おれ達が狂った考えを持ったのばぞの日からでず。
蜷川は、あの試合で自分がもっと点を取っていれば!!浜崎は負けなかったと自己嫌悪に陥り!!優樹菜は大切な人の命を奪ったサッカーというスポーツを嫌いになっだ……!!
おれはもっと強かったらって!!強くあれば何も失わずに済んだ!浜崎が死ぬこともなかったって………!!
うっ…………うああああああああ!!!」

目の前にシュリアンヌがいることも忘れて不動は泣いた。
実とオリビアと将が起きてしまうかもしれないが、どうでもよかった。
近所迷惑になろうが、この涙は止められなかった。
いっそ、二度と泣けなくなるくらい泣いてしまえと思った。
体中の水が全て涙に変わって干からびてしまえ。
制服などびしょ濡れになってしまえ。
蜷川とオリビアの痛みの分まで自分が代わって泣けばいい。

「……………」

シュリアンヌは何もしなかった。
いや、何もできなかったといった方が正しい。
慰めにしかならない言葉など、不動は欲していないだろう。


———その夜最後に飲んだカクテルは塩辛かった