二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.105 )
- 日時: 2012/09/19 21:04
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
第四章 雷の精霊
‐黒き遺産より雷の御使いが還るとき
禁断の槍は解き放たれる
多くの死と悲しみが
うずまくだろう
「ふーん、そうだったの?」
ティアからアモルフェスについて聞いた精霊たちはそういった。
ポケットに缶詰だった精霊たちはアモルフェスの最期の言葉が聞こえなかったのだ。
『…魂を食べられたおろかな人間…』
ネアキが冷たい視線を残されたダインスレフ—魂を食う剣—に向けて。
そしてその剣の元に舞い降りる。
預言書サイズの小さな体を、ダインスレフの真上にもっていくネアキ。
なんだか、悲しそうな表情だ。
『…クレルヴォ、何を考えていたの…こんな剣を与えたなんて…』
独り言のようにつぶやく。
ティアはなんといえばいいかわからず、黙ってみているしか出来ない。
精霊たちは皆押し黙って、やるせない思いに駆られているようだった。
(クレルヴォって誰なんだろう?救世主って言ってたけど…?)
質問したいのだが、いつもの天然振りがここでは出てこない。
悲しみをたたえる精霊たちに、そんなこと聞いたら帰って悲しませるだろう。
おそらく、クレルヴォという人物は精霊たちにとって大切な人だったらしい。
「ティア」
そんな表情を振り切って、レンポがティアに向き直った。
もしかしたら、クレルヴォについて教えてくれるかな…
だが違った。
剣のほうを腕指して「ダインスレフ、もらっておこうぜ。きっとこの先役に立つかもしれない」と言った。
ティアの期待はずれの顔を見て、レンポは付け加える。
「大丈夫、預言書の持ち主のオマエなら魔物になる事はない」
なんだか居心地の悪い思いで、ティアは言われたとおり、ダインスレフをコードスキャンする。
砕け散ったダインスレフは、預言書のページの上で元の形に構成されていく。
それを確認したティアは、三人の精霊を振り返った。
三人の精霊は黙ってこちらを見返している。
何か、言いたいような…ためらうそぶりを見せている。
「どうしたの…?」ティアが思い切って聞くと、三人はますますそわそわする。
口を開きかけて、うっとつまってうつむいてしまう。
けれど、ネアキが意を決したようにかすれた声で言った。
『…世界の崩壊がはやすぎる…』
一度ならず三度も、精霊たちがいった言葉。
世界の崩壊が早い…と言う言葉。
ティアにはわからない。けれど、精霊たちは不安そうにしている。
『…誰かが世界の崩壊を早めている…?』
すると、信じたくないと言う口調でレンポが言った。
「まだそうと決まってないだろ。この世界が堕落した…自業自得じゃないのか…?」
するとネアキがあきれたように眉を寄せる。
『…短絡的…それに単細胞…』
「なんだと!」
二人の口げんかが始まったが、ミエリは暗い顔を変えない。
けんかに気づいているも、放置しているようだ。
長年の付き合いの結果だろう。
「世界の崩壊を早めている誰か…まさか、ね」
ティアはネアキとレンポの口げんかに気をとられ、ミエリの意味深な言葉に首をかしげるのがやっとだった。
力まで使い出す前に、二人の精霊の仲裁に入る。
「お、落ち着いてふたりともっ」
「ティア、とめるな!だいたいコイツはいつも!」『…わたしは本当のことを言っているだけ…レンポの短絡的なのは生まれつき…』
このやり取りにミエリはようやく笑顔を取り戻した。
(そんなわけない。あの優しいクレルヴォがそんなことするわけない…)
首を振ってそんな考えを吹き飛ばすと、すっかり明るい声で告げた。
「さぁ、残る精霊はあと一人。雷の精霊ウルだよ!がんばって探そうね!」