二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.120 )
日時: 2012/12/23 14:52
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
参照: 第四篇/Dichroite Pendant (いつか役に立つ何か)

 頭のどこかを切ったのだろう、思わず見惚れてしまう長い銀髪の一部が、朱色の房になって固まっていた。なまじ他が白いだけに、その姿が余計に痛々しい。
 ぼうっと見ているうちに、再びマスターが咳き込み始める。私に手を当てるだけで人を癒す力などないが、それでも無いよりはマシかと、背を摩ってみた。あちこちに負った傷が熱を帯びているのだろうか、酷く熱いその背は痩せている。と言うかげっそりしている。
 「すまな……ッ」
 挙げようとした声は咳の酷さに掻き消された。私は無理に喋らなくていいです、とだけ声を返して、咳が落ち着くまでひたすら同じことを繰り返す。
 医療技術があるわけでなし、治癒魔法が使えるわけでもなし。そんな私が出来るのは、たとえ少しだけでも、人の気を和ませること。不安な時に手を繋いだり、辛いときに肩を叩き合ったり、そんなことでだけでも安心できる心の余裕を、あらゆる生き物は先天的に持っている。
それが通じないとは思わなかった。

 疲れ切ったのだろうか、マスターが船を漕ぎはじめた頃になって、サムスがドクターの姿を伴って降りてきた。
 「お待たせ。いやー全くぅ、この有様で階段を下りるのは難儀したんだぜ」
 流石の超人も寄り掛かるものなしでは歩けないようで、ドクターは右手に持った松葉杖に身を寄せ、もう一方の手にアルミ製とおぼしき大きな鞄を提げて、しかし存外確りした足取りで歩いてきた。木の枝がアキレス腱をぶち抜いたのなら、最低でも一年は歩けないだろうに、化け物みたいな回復力だ。お前は常人だろおい。
 「おや? 右手め、寝てるじゃないか」
 サムスよりも早く私達の所に来たドクターは、マスターの様子を一目見るなりそう笑った。つられて私もマスターの方に視線を移す。項垂れていて表情はよく見えないが、寝息を立てているのは分かった。それが安らかなものであると言うことが、私にとっての安堵だ。
 「珍しいな。何年ぶりのことだ?」
 あのサムスまでもが声に驚きの色を含めている。鞄をテーブルに置きながら言うドクターも、半ば懐かしそうに、半ば面白そうに眼を細めていた。そんなに珍しいのかマスターが寝るって。普通だと思ってたぞ私。
 「スマブラ結成初日が最後だから——五年くらいかなあ。うおぁ、僕なんて成人してない!」
 結成の時点でまだ成人してないって。それじゃあ、多く見積もってもドクターは二十四歳か。若ッ!
 ……と言うか、この世界では未成年が医者になれるんですかい。

To be continued...

マスターはヘタレですが隙は見せない人なので、人前で寝るなんてのは相当疲れてるときか、傍にいる人に相当の信頼を置いているときです。

どっちなんでしょうね。
どっちもなんでしょうか。