二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.69 )
日時: 2012/10/15 23:13
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: ptFz04.o)
参照: 第五篇/Doctor's Hint (:「宿屋の角に響く歌」)

 玄関すぐの階段を上がり、回廊を二回曲がって、ドクターの部屋の扉を叩く。
 「開いてるよ」
 つい数時間前に聞いたばかりの声が返って来た。
 扉を開くとすぐにお目見えすることになる本の山を無視し、通りやすくなった棚の間を抜けて、私は医学書をめくっている部屋の主に、そっと声をかける。傍らのカレーと赤ピクミンは、ちょっと無視。
 「怪我、大丈夫ですか? ドクター」
 「いや、全然。木の枝がアキレス腱をぶち抜いた」
 返答は無愛想で、早かった。
 ってか、アキレス腱をぶち抜かれた状態でよく此処まで帰って来れたものだ。私なぞ、足を捻挫しただけでも動けなくなると言うのに。それをドクターに言ってみたら、ノルアドレナリンとは大変な痛み止めだね、と私の方を向いて少し笑った。
 「ノルアドレナリンって……そんなことしたら血圧上がるんじゃないですか?」
 生物を習っている人には聞き慣れた言葉だろうと思う。神経伝達物質の一種で、作用は著しい興奮と痛み止め。副作用は血圧・血糖値の上昇と躁状態になること。
 「確かに、ちょっと頭がクラクラする。山の七合目から此処まで来るのに——ええと、アンプルケース丸々一本使ったからな。ま、モルヒネよりはましだよ。少し待てばあっという間に分解されるわけだしね」
 おい待たんかい。
 「一本って、一本って!」
 その内動脈破裂して死ぬぞこの医者。そして当の本人はケラケラとのんきに笑っている始末。
 「いや、僕も使いすぎとはちょっと思ったけどね。少しくらい無理してでもあの場を離れないといけない事情はちゃんとあったんだよ。何しろ僕ぁ、殺されかけたんだ」
 声はあまりにも普通にすぎて、一瞬何を言っているのかよく分からなかった。
 無理してでも離れないといけない事情は分かる。だがその次、何と言った。
 ……殺されかけた?
 立ち尽くす私を振り返り、ドクターは私の眼を真正面から睨んだ。
 冷たく、鋭い眼光。『あっち』で見た、静かな怒りの眼。なのに、声は全く変わらない。
 「確かにあの時山道の縁ぎりぎりに立っていたけれども、だからこそ油断はするものか。——僕はね、後ろから突き飛ばされたんだよ。件の破壊神に」
 ドンッとね、と両手で背を押す真似をして、ドクターは視線を窓の外に移し、溜息と共に肩を落とす。メンバーの前では恐らく見せないであろう、ひどく疲れた表情をしていた。と言うか、恐らく表情の変化自体が乏しくて、私や一部のメンバーにしか感情が読み取れないのだろう。

To be continued...

毎賞何処かしらに顔を出して喋る医者。
マスターと違い非常にタフなので、破壊神に山から突き落とされて大怪我を負っても、出番は依然として多いまま。

この次の篇くらいから、地味に遊撃隊の登場回数も増えてきちゃったりします。