二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 灰色 ( No.55 )
日時: 2012/10/27 18:15
名前: 兎欠 (ID: vj3b3W/M)
参照: http://nanos.jp/zotbox77/

36. 鮮やかな世界




   いつだって先輩はどこか冷たく私を突き放そうとする。


   私にだけじゃ、ないのかもしれない。




   でも、特別そう感じてしまうのは、きっとね









   私が先輩を、すきだから。



* * *



何の変哲もなく平凡でツマラナイ私の日々が鮮やかに彩ったのは、いつの日か。




そう、あれは入学したばかりの大雨が降ったとき。


講義を終え、キャンパスを出ようと鞄を漁るが、おはあさの天気予報で雨が降ると聞いて持ってきたはずの折畳み傘がどこにもない。
鞄をいくらひっくり返しても出てくるものは探し物以外の異物ばかり。


ノートだの本だのiPhoneだの化粧具だの、無駄に多い荷物に苛つく。



心の中で舌打ちしてキャンパス内の購買に傘がないか探しに行こうと立ち上がった。






「あんたが探してるの、これか」



そして、




出逢った。









その人が手に持っているそれは、紛れも無く正真正銘わたしの折畳み傘


「見つけてくれたの?」

「さあな」




身を翻して私から離れていくその人の背中はとても切なくて



目に光が灯っていない冷たい瞳がなんなのか






知る由もないわけだけれど。

それでも、気になって仕方がなかった。





そう、



これが私のモノクロが鮮やかな世界になった瞬間——。