二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

   // リナリアと幻想を抱いて眠る : 庭球 . ( No.2 )
日時: 2012/09/01 14:40
名前:   酸欠   ◆YitN/20R3k (ID: K75.VLwZ)





 出会いなんて忘れるくらい、過ごした日々が長く感じて、大切だった。




    //  リナリアと幻想を抱いて眠る :02




 授業中は各教科の教師に新しい教科書を貰い、事前に準備しておいたノートを使って無事に過ごした。
 わたしにとっての問題はお昼御飯だ。私立というものは大体給食制ではない。選択制若しくは弁当、学食だ。
 ということは、食べる相手がいないというのはとてもさみしいものである。唸っていると、クラスのあんまり目立たないけど元気な女の子たちが一緒に食べようと誘ってくれた。じーんってきたよ。
 自己紹介を終えて、わたし達は机をくっつけて食べる。わたしの机はわたしが、池田の机にはミズキという茶髪の女の子が、わたしの前の席のカオリという女の子はそのまま、池田の前——わたしの右斜め前にある渡部という男子の机にはリンという女の子が座った。
 みんなお弁当組のようで、ぱかり、とカラフルな弁当箱を開ける。因みにわたしは有名な、女の子受けの良いキャラクターが描かれた弁当箱だ。かわいい、という声がちらほら上がる。


「紫苑、って意外におもろいなあ。あたし、仲良くなってラッキー!」
「やよな! 関西人じゃないのにおもろいわ!」
「うんうん、というわけで改めて友達として宜しゅうな、紫苑」


 紫苑しおん、というのはわたしの名前だ。
 カオリが面白いと言い始めたのをきっかけに口々に面白いという声が上がる(といっても三人しかいないんだけれど)。それが嬉しくて笑っていると、友達として、という言葉が聞こえた。
 嬉しいと純粋に笑って、差し出された手を握った。
 それからは何だか凄く楽しかった気がする。一日目なのに遠慮はせず、みんなでケラケラ笑い合って。お弁当のおかずや果物も交換して、凄く幸せだった。友人との出会いは、わたしのこれからに大きな希望をくれるんだろう。
 高校に行ってもこのままがいいなあ、と、凄く早いけど、そう思ってしまった。まあ、会って早々に裏切られるなんてことはないと思うけどね。
 お昼休みが終われば解散。しかしカオリはわたしの前の席だから、ずっとしゃべっていた。話に寄れば体育らしい。体育着をまだ受け取っていないわたしは勿論見学組だ。


「紫苑って運動できるん?」
「あー、微妙。テニスは物凄い強い友人のお陰でできるようになったよ。あとは水泳も得意かな」
「ふうん、じゃあテニス部入ったりするんや」
「部活は入らない予定。因みにカオリは?」
「運動だいっきらい! あたし吹奏楽部なんやで」


 カオリは気が強そうな外見をしているが、吹奏楽部とは何だか意外だ。
 何の楽器をやっているのか聞いてみると、弦バス、と返ってきた。前の学校の友人もそうだった。コントラバス、だったかな。弦バスなんて言われてもわたし思い出せないよ。ていうか某常勝校の風紀委員のあの方を思い出すのは弦がつくからだろうか。
 カオリはそう言った後に「あーもう行かんと、ほな行こか」と立ってしまったので慌ててわたしも立ち上がる。
 結局運動ができるかどうかは言わなかった。するつもりは本当に無いけれど、ね。テニスがどうのこうの話しているときに、何故かパツキ……げふん、忍足からの視線が痛かった。白石からの視線も、だ。
 二人を見れば二人は複雑そうな表情でわたしを見た後、男子たちに紛れて行った。何なんだと首を傾けるうちにカオリは早うしろと言わんばかりの視線を向けてきたので慌てて体育館へ向かう。


「てか、男子もいるんだ」
「おん、そうやで。ま、あたし等はバスケ、男子はバレーやけどな」
「ふうん」


 てっきりサッカーかと思ってたよ。
 そう言えばそんなん一年とかのときにとっくに終わっとるわ、というツッコミが入った。いやいや、そういうの関係ないじゃん。


「俺の勇姿見とれ!」


 溜息を吐きつつ、男子の方へ視線をやれば一瞬だけ白石と目があった。すぐに逸らしたけど。逸らした先にはブンブンと両手を振ってそんなこっぱずかしいことを叫ぶ池田が居た。
 うるさい、と口パクすれば池田はけらけらと笑った。
 頑張るから見てろよーっ、と口パクで返してくる池田に若干苛立ちを覚えつつ、わたしは白のテープで二つに区切られた体育館の女子側の隅の方に体育座りをした。
 暫くしてやってきた保健の教師に説明をすれば構へんと笑ってくれたので、嗚呼、よかった。







 ( リナリアと幻想を抱いて眠る:02 ) // 120901.