二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ】 Bad ∞ End ∞ Night(完結) ( No.34 )
- 日時: 2012/11/24 14:25
- 名前: 藍執事 (ID: ULeWPiDO)
- 参照: リン&レンのお母さん、MEIKOさんでお願いします←
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「お父さーん」
居間のほうから、カイリの方へ双子——セレンとリンカ——が駆けてきた。
「こらこら、走ると転ぶよ」
カイリが少し笑って双子にそういうと、セレンはカイリの座っているソファの隣に座りながら少し怒ったような表情を見せた。
「オレもう六つだもんっ、そんな分けないし」
「とかいって転んだの誰だっけ?」
クスクス笑いながらセレンを弄るリンカ。
それにセレンが『何だよーッ!』と言い返すのを見て、
父であるカイリは二人の様子を微笑ましく思う。
「今日ね、あたし達、お母さんに本買ってもらったのー」
拗ねるセレンを他所(よそ)に、リンカが嬉しそうに
両手で抱えた絵本をカイリに手渡した。
『まじょ』
表紙にはそう書かれていて、ピンクの髪の女の人が描かれている。
この話は、と思い、カイリはぱらぱらと絵本を捲っていった。
あるところに魔女がいたそうだ。
その魔女は王子様と恋をして、でもそれはいけないことだからと、
魔女は捕らえられ、最後には悪魔になって飛んで行った——。
——こんな話だ。
だが、カイリの胸にはどこか引っかかる部分がある。
カイリも、子供の頃一度この童話を読んでもらったことがあった。
その時のことは曖昧だが、少し、話が違う———?
「どうしたの、お父さん」
セレンにそう声をかけられて、はっと我に返る。
ああ、ごめんね、と誤ると、双子はパッと笑顔になり、
「お父さん、読んでー」とせがんだ。
「分かった分かった」
カイリが笑って返すと、静かに絵本を読み出した。
「あるところに、ひとりの魔女がいました———」
***
『魔女』
「ガクルム皇子ー!?一体どちらにいらっしゃるのですか!?」
「困ったな・・・あと少しで立食会だと言うのに・・・!」
「全力で探しあげるんだ!」
使用人や召使達がばたばたと走る音が王宮から聞こえていた。
そんな中。
一人木影に身を潜める人間がいた——。
その近くから足音がしなくなると、その人物はそっと陰から出てきた。
紫の長髪を一つに結った、長身の人物・・・、
ムーデッド王国第一皇子・ガクルム=ムーデッドである。
異国の服装——着物を上に纏い、ラフなズボンを履いたという
いかにも質素な格好で、とても皇子には見えない。
ガクルム——通称・ガクはあたりの様子を伺ってから
裏門を潜り抜け、王宮を出て行った。・・・一人で。