二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボカロ】 Bad ∞ End ∞ Night(完結) ( No.55 )
日時: 2013/02/11 08:55
名前: 藍執事 (ID: ULeWPiDO)

第十夜

「さつ、じんき・・・?」
——いったい、何の話だろうか。
だが、なんとなく聞いたことが有るような気がした。

「やはり覚えていないのか」
ガクが呟く。カイトはそれに反射的に答える。
「・・・違います」
「何が違う?御主は覚えていないのだろう?『あの監獄』から救出されたより以前のことを」

「・・・・分かりません。でも、僕は、僕には、別に自分が中に居るみたいな感覚があって・・・
『それ』が今のことを楽しんでる。人を殺すことに快感を覚えてる・・・っ」

カイトが自身の胸を何度も叩く腕をレンが横から掴む。
止められた腕も見て唖然としたのはカイトよりガクの方だった。
「・・・レン、御主、もう慣れたのか?」
「俺だってずっとガキじゃねぇーし。ガクのほうが子供じゃーん——」と言いかけるレンの頭には拳が打ち込まれる。

「・・・やっぱ子供」ぼそりと呟く。
「レン、首と腹とどちらが良い?今なら選ばせてやるぞ」腰の刀に手が行ったのを見て両手の平を突き出すレン。
「遠慮しておくねー・・・。カイト!」

「はっ、ひゃい!・・・うわ、変な声・・」カイトがワンテンポ送れて返事する。
「な、何・・・?レンくん」
「レンくん言うなっ。呼び捨てでいいし。
いいかよ、それは、お前の姉だ」

きょとん、とするカイト。
今のレンの話しからして読み取ると、
自分の中に「姉」が宿っている。それがもう一つのカイトなのか・・・?

「お前は忘れてると思うけど。その姉はアンタが殺したんだよ」
僕が、殺した——?
カイトの頭の中でその言葉が回りだす。
「・・・その姉——メイコは急にお前に刺されて、死んだ。そこから気の触れたお前の殺人劇の始まりさ。
最後にお前は捕まり世界の孤島に収監され、そこでもまたなお殺人を始めた。そこで自分もダメージを食らったとき、御主は記憶を失った」とガク。

「じゃあ・・・この快感を覚える感情・・・それは彼女の物なの・・・?」
「違うな。それは御主本来の感情であり、今保っている穏やかな感情は彼女の物だ。
だから、カイト」

レンが手袋を外した冷たい手をカイトの眼の上に軽くおいた。
「・・・今、御主本来の力を使ってここの奴ら全員を仕留めろ!」

レンの手の辺りから薄い光が——黒と赤の混じった色がちら、と見えた。