二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボカロ】 Bad ∞ End ∞ Night(完結) ( No.58 )
日時: 2013/01/05 08:29
名前: 藍執事 (ID: ULeWPiDO)

第十二夜

目の前でもうピクリとも動かない男を見下ろし、レンがカイトの方へ向かっていく。
ガクはその男を軽く見やり、その魂が再び清められますよう、と呟きながらその場を後にする。

カイトの方へ向かうと、もうそこは血の海だった。
カイト、レン、ガク以外の人間は全員息絶えていた。

その地だまりの中で膝を付いているカイト。
「ごめん・・・ごめんなさい・・・メイコ・・・・」
何度も何度もそう呟いて、頬を雫がぬらしていた。

「・・・・レン」
「何」

カイトの少し後ろでガクがレンに話しかける。
「御主・・・リン殿とミク殿を亡くした時、カイトの状態とすごく似ていた」
「・・・そっか。じゃあガクにも同じ経験があったんじゃないかな」
「——人は永遠を欲しがる物だ。気づいたときにはもう遅すぎる。だから私は目を閉じた」

「・・・オレ、リンとミク姉が見えなくなってても、この声は伝えられると思うよ」
「そうか・・・、私はもう亡くしたものは手に入らないと思っていたな。
私とては、主様が幸せであってくれればそれで良い」
「やっぱガクは一途だね、ルカ様に」

ガクは軽く肩を竦めて、カイトのほうへ向かうと、彼の背を叩く。
「おい、カイト。こっちを向け」
「・・・ガ、クさん」
「今からでも遅くない。今度こそは彼女に云っておけ」

そういうと踵を返し、行くぞレン、と声をかけその場を去っていく。
カイトは不思議そうな顔してその場を出て行く二人を眺めていたが、はっと気づき、
「ま、待ってください!」
と二人の後を追いかけた。


*


「・・・彼女が、『ルカ様』?」
「ああ」
「いかにもそんな感じでしょ」
はは、と笑うカイトに茶化して返すレン。

三人は先ほどのことを彼女に報告しに出向いていた。
カイトとしては先ほど自分が殺めた人間を思い出しては胸が痛むが、
平然としているレンとガクを見やるととても不思議な気持ちになる。

「——あ、お願いがあるんですけど」
「・・・何だ」
「彼女の所に行きたいんです」

嗚呼そうか、と言うと、俺はいいよと返すレンを見て
三人は町の教会のほうへ出向いた。


*


教会の横の墓地。
その墓の一つの前で、カイトが手を合わせ、小さく呟いた。
「メイコ、ごめんね・・・君がくれたものを、また失くしてしまったんだ・・・」

そして手に持っていた花を静かに添える。

「お願いがあるんだ。欲張りな僕を許して——・・・お願い、僕の前からいなくならないで。
でも、君には幸せになって欲しいから・・・・」

彼は一呼吸おいて言う。

「僕のせいで狂わせてしまった人生、もう取り返しのつかないことだけど・・・・
メイコ。いつか君に伝えに行くよ。身勝手な僕を、どうか、待ってて」

「・・・・それがあんたの答えならいいんじゃない」
レンが呟く。その隣には煙管を吹かすガク。
「彼女はずっと待つことになるな。身勝手な御主をな」
「とか言ったって、ガクだってずーっとリリィちゃんの為に罪滅ぼししてるじゃん」
「笑止。消えるか、レン」
「ぎゃーっ!」

僕も暫らくここにいるかなぁ。
この二人に付き合っていくのは楽しそうだ。仕事は別で。

——そんなことをのんびり思うカイトだった。


〜Fin〜