二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第二十七話 ( No.46 )
日時: 2012/09/30 20:55
名前: 時橋 翔也 (ID: NihAc8QE)


試合の後、剣城は病院に運ばれた
緊急手術で首のアザは消えたが、もう心配ないとは言えなかった

「京介…」
剣城の病室にいた優一は呟く
剣城はベットの上で眠っていた
「海音くん…練習に行かないのかい?」
「まだ練習が始まる時間じゃないので」
優一の隣の海音は言った

剣城…

その時だった
病室に誰かが入ってくる音がした
海音が振り返ると、そこに居たのは喜峰だった
「喜峰…どうしてここに?」
「見に来たんだ…気になったから」
喜峰は海音の隣に座る

「海音くん、この子は…」
「昨日戦った海王学園の喜峰です…剣城とはシード仲間だったらしいです」
海音は言った

「シードは辞めた …というかクビになったって言った方が良いかもしれない」
喜峰は言った

「…剣城って、本当に人を殺したの?」
「ああ」
喜峰は頷いた

優一は驚愕の表情を浮かべる
「京介が…人殺し!?」
「あんたが剣城の兄貴か…」
喜峰は優一を見た

「喜峰!ここにいたのか…」
すると浪川も病室に入ってくる
「浪川…さん?」
海音は言った

「…雪雨も居たのか」
海音を見て浪川は言った
浪川は喜峰の隣に来る

「教えてくれ!!京介は…人を殺したのか!?」
優一は声を上げる
「でも多分…剣城の意思じゃないです」
喜峰は言った
「え…?」
「どういうことだ喜峰」
浪川は言った

「……俺、前にフィフスセクターがサッカー選手を使って人体実験してるのを、見たことあるんです」
喜峰は言った
「人体…実験?」
海音は声を上げる

「あくまでガラス越しでだがな…白衣の科学者達が、拘束した選手達の首に…注射器で黒い液体を入れていて…」
喜峰は思い出したのか青ざめていく

「…そういえば、セカンドランクのシード養成施設から、選手が次々に消えていく事件があったけど…」
浪川も青くなる

人体実験に使っていた…?

「使えない者はフィフスセクターに要らない…だから人体実験に使っていたんだ」
喜峰は言った
「え…じゃあ剣城も人体実験に使われたの!?」
海音は訪ねる

「いや…でも剣城は消えることなく、そのままファーストランクに上がって行ったぞ」
浪川は言った

「……俺 見たんです 剣城が森で変な男と話していて…男に近づかれて首に注射器を刺されていた所を」
「なぁ喜峰…人体実験に使われた選手はどうなったんだ?」
浪川は訪ねる

「注射をうたれてしばらくして…うたれた所から黒いアザが出てきてたんです…剣城のような そして…狂ったように叫び出して おかしな行動をしてました」

「…残酷な…」
優一は呟く

「そして最後…自分で手首を切って次々と自殺していきました」
「……!!」

ひどい…

「だから剣城も…うたれてしばらくしたら叫び出して それが止んだらどこかへ向かいました まるで男に操られたかのように」
喜峰は言った

「でも何で…華音を?」
浪川は呟く
「キャプテン知らないんですか?華音はフィフスセクターの管理サッカーにかなり批判的で、施設の管理人からひどく嫌われていたんですよ…だからかも」

「…ははっ」
すると浪川は額を押さえる
「浪川さん?」
「…なんか俺はとんでもないバカ野郎だったな 仲間を簡単に殺せる集団に忠誠を誓ってたんだから…フィフスセクターに救われた?そんなの俺を利用する為だったんだ!!」
「キャプテン…」

「…京介」
優一はうつむく
そこからは涙が溢れていた
「すまない京介…俺の為にッ…!!そんな事をされて…!!」

「優一さん…」
剣城だけじゃなく、優一さんも剣城をシードにしてしまった責任を感じていたのはわかっていた

「…華音の本当の仇は フィフスセクターって事か…」
浪川は呟く
「華音だけじゃない 他の実験に使われた仲間も」
喜峰は言った

その時だった

「…う……」
剣城は目を開いた
「剣城!」
「…海音?それに浪川も…」

「…珍しいな 剣城が下の名前で呼ぶなんて 華音以来だな」
浪川は言った
「……海音は 華音に似てるんだ」
剣城は言った
そして起き上がる

「え…そうなの?」
「そういえば…雰囲気がよく似てる」
喜峰は海音を見た
「…剣城、華音が死んだあの日 一体何があった?…洗いざらい話せ」

「……どこから話せば良いんだか」
剣城は呟いた

——————


フィフスセクターに入り、連れてこられたのはセカンドランクの特訓施設 だった

シードの養成施設だけあって、かなり厳しい特訓が課せられた

「野郎共!今日も特訓頑張ろうぜ!」
セカンドランクでかなりいい成績だった浪川は セカンドランクのシード達の兄貴みたいな存在だった

勿論俺にも優しかった
「俺は浪川蓮助 宜しく新入り!」
「…宜しく」
浪川は俺より一つ年上だったが、シード仲間の間に敬語はほとんど無いらしい

「君 サッカー上手いね!」
ある日、俺に話し掛けてきたのは、同じセカンドランクの者だった

銀髪だが所々が黒い不思議な髪をしていた
「僕は黒並華音 君は?」「剣城京介だ」
「そっか 宜しく!」

俺に話し掛けてきたのは、浪川と華音位だった
何故か皆は俺を避けていた…まぁこんな容姿なら仕方ないか

「…黒並は何でシードになったんだ?」
「華音でいいよ京介」
華音は言った
「僕はね…姉ちゃんを助けるためさ」
「姉貴がいるのか」
「うん 今は稲妻町の病院に入院してるんだ」
「稲妻町…俺の兄さんも入院してる」
「そうなんだ!じゃあシードになれたら一緒に行こうよ!」

華音は明るくて…俺には眩しかった

「…姉ちゃんはね、すぐにでも手術しないといけない位重い病気でさ 手術費を稼ぐためにシードになるんだ」
「……俺も、兄さんの手術費の為にシードになる」
俺は言った
「そうなの?」
「兄さんはサッカーが好きで…でも俺のせいで足に怪我をしたんだ だから足を治すためにな」

「テメェらそろそろ練習始まるぞ!」
そこに浪川がやって来た
「ん?なんの話してんだ?」
「シードになる目的だよ蓮助」
華音は言った

「目的?…俺には特にない ただ俺を救ってくれたフィフスセクターに忠誠を誓う それだけだ」
浪川は言った

みんなそれぞれ目的が有るんだな…