二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第二十八話 ( No.47 )
- 日時: 2012/10/01 18:54
- 名前: 時橋 翔也 (ID: NihAc8QE)
- 参照: やばい 文がグダグダだああああ!!
第二十八話
「…京介は 管理サッカーについてどう思う?」
施設での生活に慣れてきたある日 俺は華音にそう訊かれた
「…シードだからあまり言えないけど サッカーは本気でやりたい」
「僕もだよ」
華音は言った
「…だからシードには出来たらなりたくない サッカーで人を痛め付けたくないしね」
華音は基本的 暴力が嫌いだった
サッカーも他の奴等と違い、暴力的じゃない普通のプレーをしていた
「…ねぇ京介」
「なんだよ」
「もし僕が生きてここから出られなかったら…姉ちゃんの事をお願いできる?」
「…は?」
思わず俺は声を上げた
どういうことなんだ?
「どういう事だよ」
「だって最近、この施設のシード達が次々と消えてるじゃん…もし僕も消えたらさ」
「けど…消える奴等の殆どがサッカーが上手くない奴等だ…お前はサッカー上手いだろ」
「そうかな…」
華音は呟いた
その日の夜の事だった
華音の言っていたことが気になって、就寝時間になっても眠れず仕方ないから本を読んでいた
なんで華音は…あんなこと言ったんだろう
姉ちゃんを頼むって…まるでもうすぐ死ぬような…
その時
「ん…?」
施設の寮の窓から、外の森に向かう人影が見えた
「誰だ…?」
そう呟き、目を凝らすと、それは華音だった
「華音…!?」
バカかあいつ…無断外出したら消えるかもしれないのに!
そう思って、俺も外に出た
森に行くのは初めてだった いつもはグラウンドで練習していたから…
「華音!華音ッ!!」
俺は叫ぶが、華音は見当たらない
森をしばらく歩いても、華音のいる痕跡は全く見られなかった
これ以上進んだら、迷いそうだな… そう思っていた時だった
「剣城…」
背後から声がした
急いで振り返ると、そこには一人の男がいた
ちょうど久遠監督と同じくらいの歳で、髪が長かった
「あんたは…」
見たことがあった
確かこの施設の副管理人だ
「お探しものかい?無断外出するとは…」
「………」
どうする?
無断外出だとばれてしまった…
「黒並を探しているんだろ?」
「…!」
何でわかるんだ?
「…剣城 頼みがある」
「……頼み?」
俺は声を上げた
なんだよこいつ…
初対面の俺にいきなり…
「黒並を……………………………………………………………殺せ」
「…え?」
華音を…殺すだと?
「何言ってんだよ…」
こいつアホか?
いきなりそんなこと言われて、すんなり受け入れると思うか?
「君…兄がいるだろう?昔怪我をさせた」
「………」
まさかこれはフィフスセクターからの指示だと言うのか?
「…断る」
俺は言った
出来るわけない
華音を殺すなんて 出来るわけ…
「兄が…生きる希望を失ってもか?」
「くっ…」
それでも…俺は…
すると男はため息をついた
「…まぁ、こんなことは予想してたよ」
その時、男の姿が揺らめいて 消えた
「なっ…」
慌てて俺は辺りを見回す
一体どこに…
「遅い」
背後から声がした
振り返るのと同時に、首に何かを刺され、鋭い痛みが走った
「ぐああああッ!!!」
俺は膝をつく
首に刺された物を触ると、注射器だと分かった
ピストンが押されてる…何かを入れられた!?
「ぐっ…」
俺は辛うじて注射器を抜くと、首を押さえながら立ち上がる
「何を…」
「今 君に入れたのは開発した薬だ…楽しみだね、君がどうなるのか」
男は言った
どういうこと…だ?
「もう一度言う …黒並を殺せ」
その時だった
突然 頭が割れるような頭痛がした
「くっ…!」
俺は頭を押さえる
黒並を殺せ
黒並を殺せ
くろなみをころせ
クロナミヲコロセ
頭の中でこだまする
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」
殺したくないはずだった
だけどいつの間にか俺の思考はこれしか考えられなくなっていた
『華音を殺す』
男からナイフを渡され、俺は歩き出す
華音を殺す…管理サッカーを否定する華音を…俺がこの手で…
しばらく歩くと、華音が一人でぽつんと立っているのが見えた
「京介?」
華音はこちらを見た
「…どうしたの?こんな夜中に」
「……」
何も言わず、俺は華音に近づいた
「…?京介、どうし…」
華音は最後まで言えなかった
俺はナイフで華音の腹を思いきり刺した
「え…きょう…す…け?」
ナイフを思いきり抜くと、華音は思いきり血を吐き出した
「がはっ!!」
華音は血が止まらない腹を押さえる
恐ろしいくらい鮮やかな鮮血だった
華音は地面に倒れた
俺は近づき、しゃがむと華音の背中を突き刺した
「ぐあっ!!…ひどいな…まさか…京介を…差し向ける…なん……て」
それきり、華音は動かなくなった
殺した 殺した
「……??!」
その時、俺は我にかえる
真っ赤に染まるナイフ 動かない華音
俺の頭は真っ白になった
「剣城…」
向こうから声がした
見ると浪川が立っていた
「剣城…お前…」
「あっ……」
俺は立ち上がり、逃げ出した
怖かった 何もかもが
相手も自分も何もかも
そのあとはよく覚えてない
華音の遺体はそのあと教官達によって発見された
だがあくまでも『事故』という処置だった
そのあとすぐに、俺はファーストランクに上がり、その施設を後にした
——————
「……!」
驚きのあまり、海音は声が出なかった
「…そんなことが…」
浪川は呟く
「京介…すまない 俺のせいで…」
「そんな…兄さんのせいじゃないさ…」
剣城は言った
「…キャプテン、そろそろ学校に向かわないと間に合わないです」
「そうだな」
喜峰と浪川は立ち上がる
「…剣城、今まで疑って悪かった」
そう言って二人は出ていった
「剣城、ボクも練習行くけど…今日はこれそう?」
「ああ…後から行くから、先に行っていてくれ」
「分かった」
海音は頷き、病室を出ていった
剣城にあんなことがあったなんてね…