二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第三十話 ( No.49 )
日時: 2012/10/04 19:56
名前: 時橋 翔也 (ID: NihAc8QE)
参照: なんだか恋愛っぽくなったー!!


河川敷で天馬や神童と少し練習したあと、剣城は一人で家に帰っていた
天馬とは家の方向が違うし、神童とはさっき別れた

そうやって一人で歩いていた時だった
「ん…?」
剣城の目の前に一人の少女が立っていて、立ち止まる

白い長い髪を二つ縛りにしていて、顔立ちの良い美少女だった

「…誰だ?」
年は同じくらい…でも雷門であんな女子は見たことがない

着ている服も、真っ白なワンピースでひどく質素だ
「……あの人の 心の片割れ」
少女は言った

心の…片割れ?

「…どういう意味だ?」
剣城は訪ねる

だが少女は答えず、歩いていった

何だったんだ…あの少女は
けど…誰かに似ている気がした

——————

次の日

放課後のサッカー棟に雷門イレブンはいた
「あれ?海音は?」
「掃除当番だとよ」
天馬に剣城は言った

「…にしても、いよいよ全国大会なんだな」
三国は言った
「フィフスセクターに従ってたあの頃が夢みたいだ」
車田は言った

「…海音と天馬のおかげだな」
神童は天馬を見る
「いや…すごいのは海音ですよ サッカー上手いし」
天馬は言った

「…でもさ 海音って何者なんだろ」
すると信助は言った

「何者って?」
「だって海音はサッカー初心者なんでしょ?…上手すぎない?」
「…確かにな」
霧野も頷く

「……海音は まだ俺達に話してない事がある気がする」
「………」
剣城は黙っていた

海音は自分が女子だとまだ皆に言ってない

…そういえば 天河原戦のキャラバンの中で、海音は自分にすごい秘密があると言っていた

一体何なんだろう

その時、海音がサッカー棟にやって来た
「こんにちは〜」
海音は言った

皆は海音を見ていた
「…海音、お前は何者なんだ?」
単刀直入に霧野は言った

「…どうしてですか?」
海音の雰囲気が微妙に変わる

「だって…海音はサッカー初心者なのに俺達よりもサッカー上手いだろ」
倉間は言った
「…多分 幼馴染み達とボールを蹴りあってたから…」
海音は言った
「…ボールを蹴りあっただけであの実力って…」
信助は言った

「…もう良くないですか?」
見かねた剣城は皆に言った
「誰にも、話したくない事はある」
「そう…だよね ゴメンね海音」
天馬は言った

「…すいません ボク気分悪いので帰ります」
すると海音はサッカー棟から出ていった

「…やっぱり何かあるな」
三国は言った
「アイツの親ってどんな人だろ」
「さぁな」

「…ねぇ剣城」
すると天馬は剣城に近づく
「なんだ?」
「剣城って…海音の事 好きなの?」

皆の視線が二人に向けられる 驚愕の表情を浮かべていた

「え?…剣城マジで?」
倉間は言った
「だって海音は男だぞ?」
「な…ッッ!!」
剣城は顔を真っ赤にした
大体、海音は女子だ!

「松風!!何を根拠に…」
「だって…剣城っていつも海音と話してるよ?」
天馬は言った
「練習だっててたまに俺とするけど、大抵は海音とだし…シードだった時は海音に何気優しいじゃん」
「確かに…」
神童は呟く

「あ…あれは…海音が話すから…」
「でも剣城 嬉しそうじゃん」
浜野も言った

「まぁ俺は応援するからさ…頑張って!」
天馬は言った

「お…俺 海音を見てくる」
耐えかねた剣城はサッカー棟を飛び出した

「てか剣城も…案外可愛いな」
クスクスと霧野は笑った

——————

外は雨が降りだしそうな曇り空だった
「………」

『海音…お前は何者なんだ?』

海音の中でその言葉がこだまする

何者…か まぁ言ったら驚くだろうな…

近くでビルの建設をしてるので工事の音がうるさい

その時だった
「…海音」
落ち着いた声が後ろから聞こえた

振り返ると、剣城が立っていた
「剣城…どうしたの?」
「…練習に来ないか?」
剣城は言った

「…気分悪いからいいよ …ごめんね」
そう言って海音は背を向けて歩き出す

すると剣城は海音の手を掴んだ
海音の手はひどく冷たかった

「練習…来ないのか?」
「…ごめんね」
海音は剣城の手を振りほどき、走り出した
「待てよ海音!」
剣城もその後を追った

だが海音の足は速く、全然追いつけない
本当に女子か?

その時 大きな音がして剣城は立ち止まる
上を見ると、ビル工事に使われている細長い鉄骨が大きく揺れていた

「あ…」
海音もかなり遠くで止まった

まずい…よけないと

そう思っていると、剣城の上から何本もの鉄骨が降り注いだ

「剣城ッ!!」
海音の声がした
ダメだ…避けられない…

海音はすごい早さで剣城に向かっていく
だが このままじゃ間に合わない

すると海音の周りに冷気が発生する
それは一ヶ所に集まり、剣城の周りに氷の柱を造って鉄骨を剣城のすぐ真上で止めた

「な…」
剣城は氷で止まった鉄骨を見上げる

これは…一体…

「あ…」
氷を生み出した手を見て海音は声を上げた

どうしよう…
殺される…

「海音!?」
剣城は海音を追いかけた

その背後で、氷の柱は音をたてて崩れた

——————

雨が降ってくる
それは瞬く間にどしゃ降りとなり、あっという間に海音をぬらした

力を使ってしまった
どうしよう…

鉄塔の上で、海音はうずくまりながらそう思った
「……」
『あの組織』にバレたら…今度こそ殺される

どうしよう…

すると海音の上に何かがかぶせられた
その前に立っていたのは剣城だった
「剣城…?」
「…すまない 助けてくれて」
制服の上着を着ていないことから、かぶせられたものが上着だと気づく

剣城は海音の隣に座った
「…ボク 殺される」
「……は?」
「力を使ったから…使うなと言われてたのに」
海音は言った

「力って…さっきの氷か?」
「うん… 前にキャラバンで言ったよね すごい秘密があるって…これの事だよ」
「……海音 お前は何者なんだ?」
剣城は訪ねる
「…雪女 知ってる?ボクはその雪女の末裔…らしいんだ」
「雪女…」

よく昔話に出てくる、氷の力を持つ妖怪だ
「お母さんはもっと氷の扱い上手かったけどね」
「海音…殺されるってどういうことだ?」

すると海音は立ち上がる
そして上着を剣城に返した
「剣城ありがとうね…これ」
「海音…答えろよ!」
剣城も立ち上がった

「…ごめん、答えられない」
「海音…!」

『剣城って…海音の事 好きなの?』

天馬の言葉が剣城の中によみがえる
もしかしたらそうかもしれない

すると海音はいきなり剣城の手を掴んだ
「海音?」
剣城が言うと、海音の手が冷たくなっていき
剣城の手が凍り始めた

「なっ…!?」
「こんなことをされても…君はボクと関われるの?」
静かに海音は言った
「もう…誰も死なせたくないんだ」

「俺は…かまわない」
剣城は言った
すでに右腕から首にかけて凍りついていた
「お前が雪女だろうと、俺はお前を見捨てないから …海王の時のように」
「…!」
海音は剣城から手を離す
すると凍りついていた右手が元に戻る
「…ありがとう 」
ただそれだけ言って、海音は剣城から去っていった

雨はいつの間にか強くなっていた