二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第三十七話 ( No.59 )
日時: 2012/10/21 10:28
名前: 時橋 翔也 (ID: oMcZVhE7)

気がつくと、いつの間にか寝ていたのか、あの森に来ていた
「…この島っていいな ここでサッカーしたら楽しそう」

「そうでもないよ」
海音の言葉を遮ったのは、シュウだった

「あ シュウ…」
「この島には……サッカーの悲しい話があるんだ」
シュウは言った
「島には村があって、何年かに一度大きな干ばつがあった それを神の怒りだと考えた人々は神への生け贄をささげる儀式を始めたんだ … 若い娘を一人選んで海に流す…そしたら村は救われるとね」
「…生け贄…」
海音は呟く

「誰を生け贄にするか、サッカーで決めることになった 負けたチームの少女を生け贄にするんだ …でも生け贄に選ばれた娘には兄がいた 彼は妹を守りたかった だから相手チームに負けてくれるよう頼んだ お金で勝負を買ったんだよ …けどそれはバレて、兄は村から追放された 妹も守れなかったんだ」
「そんな…」

「そして一人になり、大好きなサッカーも出来なくなった兄はひっそりと暮らし死んでいった」
シュウはうつむき 拳を握る
「勝てると確信できる力があれば…あんなことはしなかったんだ サッカーが強くないと 価値が無いんだ…」

——————

「…本当にそうかな シュウ…」
目覚めたベットの上で、海音は呟いた

——————

「…倉間って なんか悩んでんの?」
河川敷で練習していた次の日
休み時間に浜野は訪ねた

「もしかしてストライカーに選ばれなかったから?」
「ちょっ浜野くん…唐突過ぎますよ!」
速水は言った

「…俺さ、一年生の時からあまり練習しなかった …管理サッカーなんだし 練習しても無駄だってな」
倉間は言った
「だからかな… 剣城とか海音とか見ろよ 一年であのシュート力って…マジ敵わねーよ …錦も帰ってくるし、俺はお払い箱かもな」
「そんな事ないよ」
すると吹雪は言った

「僕も昔 自分なんかいらないって思ってた でも必要としてくれる仲間がいた …皆で強くなろうよ」「…!」

「そ そうですよ倉間くん!」
「俺達は仲間っしょ」
速水と浜野は言った

「な なんだよお前ら! 恥ずかしい…」
「アハハハ」

「………」
海音は地面に座ってうつむいていた
サッカーが強くないと意味がない…
そうなのかな

その時だった
海音の携帯から着信音がした
開いて見ると電話が来ている
電話番号だけが表情されていて、差出人不明だ

海音はボタンを押した
「…もしもし……」
誰なんだろう そう思いながら海音は言った

『雪雨海音か? 俺はフィフスセクターの者だ』
少年の声がした

フィフスセクター?…と言うことはシード!?

「ボクに…何か用?」
『今すぐ駅の前に来い 話をしようぜ…海音』
そこで電話は切れた

なんだか懐かしい感じがした

「!?海音! どこへ行く!!」
神童の声は無視をして海音は走り出した

——————

駅の前に来ると、海音は辺りを見回す
どこにいるんだろう…

「久しぶりだな」
すぐ横から声がした
見ると青い髪の少年がいた

その少年には見覚えがあった
「豹牙!?」
「なんだよ 感動の再会だってのに」
豹牙は言った

海音は足を見る
「足治ったの?」
「ああ…やっぱお前らにとっては不都合かもな」
豹牙は海音を睨む

え…豹牙は何を言ってるの?

雷門イレブンもやって来るが、驚きのあまり気づかない
「なんでボクがそんなこと…」
「とぼけるな!…夜桜と共闘して俺の足を奪ったくせに!!」
豹牙は言った

「雪雨…?」
雷門イレブンと来ていた吹雪は言った
豹牙は吹雪を見る
「…やっぱり人なんて信じるんじゃなかった あんたも俺を裏切ったんだから」
「な…僕は裏切ってなんか…」
「じゃあなんで雷門と一緒にいるんだよ!!」

海音は辺りをみた
シードはどこにいるんだろ…
「…シードを探してるのか?」
豹牙は言った
「言っとくけどシードは……俺だから」

「え?」
夜桜の時のように 頭が真っ白になる

豹牙は無言で去っていった それでも何も言えなかった
「…海音 足を奪ったってどういうこと?」
吹雪は訪ねる
「豹牙は一度…雪原で熊に襲われて右足を失ってるんだよ」
でもさっきは 確かにあった

手術でもしたんだろう
「…アイツとは友達か?」
「うん …幼馴染み」
海音は剣城に言った
「昔 同じ施設に住んでたんだ… けど足を失ってすぐに施設を出ていった …シロにぃが施設を出てすぐに入ったから 豹牙はシロにぃを知らないんだっけ」
「…雪村は 白恋で出会ったんだ 」
吹雪は言った
「たしか当時から足はあったけど…」
確かに少々ぎこちない所はあった

「…悩んでいても仕方ない 練習しよう」
円堂に言われ、海音達は河川敷に戻っていった

——————

あの事故が起こったのは、今から五年前、豹牙が施設に入って一年が経った時だった

「知ってる?昔この施設にいた人はね、熊を倒すくらいサッカーが強いから『熊殺し』の名前をもってたんだよ」
ボクは夜桜と豹牙に言った

「へー」
「俺も熊を倒してみたい!」
夜桜は言った

「けど、熊がいるのって雪原だろ?所長さんが許してくれないぜ」
「なんだよ豹牙 怖いのか?」
「違う」
「じゃあさ明日、三人で行こうよ」
ボクは言った

「アイツは?」
「体弱いから無理だろ」
「…こういうこと喜びそうなんだけどな」
夜桜は言った

「よし 明日の六時に『氷雨の樹』に集合な!」
「うん…」
豹牙も頷いた

この何気ない会話が あの事故を引き起こしたんだ

当日、豹牙は早めに施設を出たのか、ボクらが気づいた頃にはいなかった

「あいつせっかちだな〜」
「まぁいいや ボクらも行こう」
ボクは言った

そして雪ふる早朝、事故は起こった
施設を出た直後、ボクと夜桜が聞いたのは、豹牙のものと思われる悲鳴だった

「豹牙!?」
嫌な予感がする
すぐにボクらは走り出した

施設から歩いていくと、雪原に入り、氷雨の樹が見えてくる
氷雨の樹は雪原にあるが街に近い方に立っているので熊が出る危険はないはず…だった

氷雨の樹が見えたのと同時に見たのは、黒い大きな何かと倒れている何か
それが豹牙と熊だと気づくのに時間は掛からなかった

「豹牙!!」
雪女の力で周りの雪を熊に向ける

そして熊が去ったあと、ボクらは倒れている豹牙に駆け寄った
「豹牙!しっかりしろ!」
夜桜は豹牙をゆする

豹牙は至るところに血がついていて、特に右足は血まみれで何がなんだかわからない

そのあと、夜桜が呼んだ救急車で豹牙は病院に運ばれた
そして施設に戻ったボクらは所長さんに衝撃の事実を聞いた

『…豹牙くんは、命に別状はないけど、右足をぐちゃぐちゃにされていて、右足を切断するそうよ』

つまり、豹牙はサッカー出来ない体になるのだ
あんなに上手かったサッカーを失う…

それから、豹牙の部屋のものはなくなり、豹牙は施設から姿を消した

先ほど見た豹牙とは、実に五年ぶりの再開になる