二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第五十一話 ( No.77 )
日時: 2012/11/13 19:43
名前: 時橋 翔也 (ID: xhJ6l4BS)


「この近くをくまなく探せ まだ近くにいるはずだ」
牙山が言うと、男達は何かを探し始めた

何を…探しているんだろう

その時だった
海音は誰かに裾を引っ張られた

見ると、そこには海音より年下の少女が立っていた

「来て…そろそろ術が切れかかる頃だから」
「え…君は…?」
海音は言った
どこかで見たことある…

…あ

「……君はもしかして シュウの妹の…?」
「こっち」
少女に手を引かれ、海音は走り出す

そしてやって来たのは、少し離れた高台だった
森のすぐ目の前で、試合もよく見える

「ごめんなさい…訳も話さず術をかけて」
少女は言った
「術って…?」
「今の貴方はある意味幽霊と同じなの 私がかけた術のせいで」

…もしかして
「皆にボクが見えてないのは…術のせい?」
すると少女は頷いた

「私はミュウ …あなたは海音さんだよね お兄ちゃんの仮想空間によく来てた」
少女は言った
「仮想空間?」
海音は訪ねる

「力を究極にまで高めた人は、その力で夢の中に自分の世界を造れるの …だからあなたはお兄ちゃんの夢に入れた」
ということは、あの森は全てシュウが造ったものというわけだ

「お兄ちゃんって…シュウの事だよね」
「うん… そうだよ」
ミュウは頷いた

「海音さんは知ってるよね …私たちはもう死んでるって」
「うん 知ってる 」
海音は言った

「お兄ちゃんは私が生け贄にされたあと、力を過剰なまでに求めるようになった …お兄ちゃんは今、力を手に入れるためにフィフスセクターに入ってるの」
「シュウが…フィフスセクターに!?」
海音は声をあげる

「そんな…シュウはサッカーが大好きなはずなのに」
「…きっとお兄ちゃんは 自分のせいで私を死なせたって思ってる そんなことないのに…」
ミュウは言った

「私は普通の人には見えない お兄ちゃんとは少し違う亡霊なの だからお兄ちゃんとは話せない…」
「…今のところ、君が見えるのはボクだけなんだ…」
海音は呟く

「お願いがあるの…海音さん お兄ちゃんを助けてあげて」
「助けるって…サッカーで?」
「うん お兄ちゃんの目を覚ますにはサッカーしかない」

すると海音のなかにひとつ疑問が生まれた

「…でも、なんでボクを皆と引き離す必要があったの?」
「……あっちを見て」
ミュウは向こうを指差す

そこでは男達が何かを探している様子だった

「フィフスセクターはあなたを探してる」
「え…ボクを!?」
海音は驚く

「海音さんは…ある組織に命を狙われてるんだよね?」
ミュウに言われ、少し間をおいて海音は頷いた

「フィフスセクターはその組織と手を組んだの …海音さんを渡せば強力なシードを生み出す方法を教えるって」
「じゃあ今でてったら…」
「捕まって、殺されると思う」

海音は絶句した
そんなことが…

「でも…私が何とかするよ」
ミュウは微笑んだ
「ミュウ…」
その時だった

「うわああああッ!!」

向こうのグラウンドでは土ぼこりが立っていた
見るからに、相手は白竜以外動いていなかった

「…白竜!」
すると海音は走り出した
「海音さんダメ!今出ていったら…」
ミュウもそのあとを追う

「へへっ…」
白竜は再び強力なシュートを繰り出そうとした
時だった

「白竜ッ!!」
海音は白竜の目の前に立ち塞がる
「なっ…海音!?」
白竜にはどうやら見えるらしい

だが周りを見ると、海音が見えているのは白竜だけだ

「海音…だと…?」
すでにボロボロの神童は言った
だが 辺りには海音の姿は見えない

「もうやめようよ!こんなの白竜のサッカーじゃない!」
「…くっ 」
白竜は海音に向かって駆け出す

そして海音をすり抜けた
「白竜…」
シュートする鋭い音と悲鳴
白竜…なんで…

ここで試合終了
雷門の完敗だった

「くっ…」
「剣城!」
近くで剣城が地面に倒れる
「格の違い わかってもらえたかな?」
白竜は言った

「白竜…」
「海音…そうか お前は雷門の一人だったのか」
白竜は海音を見て言った

だが周りの人々には、白竜はただの独り言を淡々と話すおかしなやつにしか見えない

次の瞬間だった

グラウンドにサッカーボールが転がり、そこから大量の土埃がグラウンドを包み込む

そして、走ってくる人影が見えた
「海音さん!逃げるよ!」
「ミュウ…」
「急いで!」
土埃と共に、海音はミュウと森の方に走っていった