二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第五十二話 ( No.78 )
- 日時: 2012/11/17 13:38
- 名前: 時橋 翔也 (ID: B6N9vk9k)
顔に水滴が滴り落ち、天馬は勢いよく起き上がる
「これって…?」
どうやらここは洞穴のようだ
辺りを見ると、周りも次々と起き上がる
「どうやら誰かに助けられたらしいな」
「さっきまで俺達はアンリミデットシャイニングと戦っていて…」
「………」
「剣城くん どうしたんだい?考え事?」
「…白竜が言っていたこと…」
『なっ…海音!?』
「白竜がなんで海音を知っているのかはわからない…だが白竜はまるで、目の前に海音がいるかのように言っていた」
「よっ!皆気がついたみたいだな」
声がした
洞穴の奥から、円堂が歩いてくるのが見えた
「円堂監督…?!」
——————
「もう すっかり夜だね」「この島はすぐに暗くなるの」
ミュウは言った
歩いているのは、よくシュウと会っていた森とよく似た森だった
するとミュウは立ち止まり、上を指差す
「あそこが私の家なの」
それは樹の枝にある小さなツリーハウスだった
ミュウは入り口に掛かっているはしごを登り始めた
「狭いけど…ごめんね」
「いいよ べつに」
登りながら海音は言った
なかに入ると、ミュウはろうそくの灯をともした、するとテーブルやイス、ベッドが置かれているのがわかる
「きれいな家だね…」
「…昔 お兄ちゃんと住んでた家の中を再現したの」
ミュウは言った
よく見ると、なぜかベッドが二つある
「…もしかして このベッドはシュウの分?」
「うん …多分 お兄ちゃんが使うことは無いかも」
ミュウは悲しげに言った
——————
円堂の他に居たのは、元イナズマジャパンの吹雪、壁山、風丸、不動だった
円堂の話によると、この島を調べている仲間らしい
「円堂監督、ここに来た理由を教えてください」
「調査ってどういうことですか?」
天馬は言った
「訳も話さずチームを離れることになってしまってすまなかった… 実は白恋との試合のあと、ある事実を知ってしまったんだ」
円堂は言った
「僕はこの島に少年達を閉じ込め、シードを生み出すための恐ろしい特訓を行っている施設があることを掴んだんだ」
吹雪は言った
「そのことを雷門と白恋の試合の後に円堂くんに伝えた」
「俺達の調査によると、シードはフィフスセクターが運営するいくつかの特訓施設によって生み出されている」
風丸は言った
「その中には高い能力を持つプレイヤーだけを集めた最高ランクの特訓施設が存在する それが究極のプレイヤーを生む島 ゴッドエデンだ」
円堂は言った
「問題はそのやり方だ この島では少年達を閉じ込めて無理矢理特訓をさせている可能性がある」
不動は言った
「…まさか 海音はフィフスセクターに捕まって特訓を受けさせられるのかな」
すると輝は言った
「影山…」
「けど、それが本当なら大問題ですよ!円堂監督 これからどうするんですか!?」
天馬は訪ねた
「もちろん俺達は少年達を解放して フィフスセクターの陰謀を暴く」
円堂は言った
「……」
「どうした吹雪?」
「いや…なんで海音だけ僕らと引き離されたのか…」
吹雪は言った
「…そういえば俺、監督たち以外の人影を見た気がする」
天馬は言った
「…もしかしたら、実は海音は近くにいるんじゃないですか?」
剣城は言った
「ただ 俺達に見えてないだけで」
「幽霊みたい…」
「海音ー いるのー?」
天馬は言ってみるが、返事はない
その時
天馬の腹が鳴った
「…あ」
「そういえばめしまだだったな …今 簡単なの持ってくる」
そう言って円堂達は洞穴の奥に消えていった
——————
「ごめんね 果物だけで…」
「全然良いよ この果物おいしい!」
海音はそう言いながら、見たことない果物を頬張る
おいしいと言っても、海音にはおいしいとまずいの判別がないので、大した理由ではない
「よーし!明日からはサッカーの特訓をしよう…」
「海音さんってサッカー好きなんだね」
「うん 楽しいよ!」
するとミュウは悲しそうにうつむく
「…きっとお兄ちゃんは、そう思ってない」
「………」
シュウ…
すると突然、すごい眠気が海音に襲いかかる
そしてベッドに倒れ込み、そのまま寝てしまった
「………」
疲れていたのかな そう思いながらミュウは毛布をかけた
——————
眠れず、剣城は外に出た
ここはどうやら廃墟のようで、剣城は風が気持ちいい高いところに行く
「………」
すると剣城は頭に手をかけ、縛っていたゴムを外す
そのとたん、ポニーテールがほどかれ、長い藍色の髪が風になびいた
なんでここまで伸ばしたのか、実際自分でもよくわからない
気がついていたらこんなに伸びていた…とでも言うべきか
「…剣城?」
後ろから声がして、とっさに剣城は振り返る
そこに立っていたのは、霧野だった
「霧野先輩…」
まずい 一番この姿を見られたくない先輩が来てしまった
「珍しいな 剣城が髪を降ろすなんて…一瞬誰だかわかんなかった」
「そうですか…」
すると霧野もゴムを外し、二つ縛りをほどいた
縛らないと、余計に女っぽく見える
「神童や家族以外に見せるのは始めてだな」
「…先輩は 髪を切ろうと思ったこと無いんですか?」
剣城は言った
「あるさ 何度も…でも切れなかった」
「切れなかった…?」
「…トラウマのせいかもな」
霧野は言った
「トラウマ?」
「俺には姉さんがいたんだ」
霧野は悲しげに言った
「…姉さんは美人で、なんでもできる人だった 両親も、姉さんにはとても優しかった… 圧倒的に姉さんが優遇されてた」
「………」
「ある日、姉さんは交通事故で死んだ いともあっさりとな そして聞いてしまったんだ 夜中の両親の話が 『奈美じゃなく 蘭丸が死ねば良かったのに』」
霧野は言った
「悲しかったよ だからその日から俺は一変した 髪を姉さんくらい長くして、勉強もがんばった …俺が姉さんになれば両親もきっと俺を見てくれる そう思ったんだ」
「…で、実際どうなんですか?」
剣城は訪ねる
「両親は…結局見てくれる事はなかった 両親は姉さんが死んでから目が虚ろになり…ある日ビルの上から自殺した」
霧野は言った
「多分、しばらくは髪を切ることは無いと思う …剣城は切らないのか?」
「俺は…昔からの髪型なんで」
剣城は言った
「そういや 剣城は海音に告らないのか?」
「それ、松風と狩屋にも言われました」
剣城はため息をつく
「…結局、剣城は海音が好きなのか?」
「………」
顔を赤くしながら、剣城は頷く
「多分、恐らく…」
「へ〜(゜▽゜)」
だが霧野は、神童も海音が好きだと言っていた事を思い出す
どっちが勝つのかな…
霧野は再び髪を縛った
「まぁ頑張れよ剣城!」
そう言って中に戻っていった