二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【標的39更新/更新停滞中】 ( No.107 )
- 日時: 2012/10/30 17:25
- 名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)
- 参照: 1000突破しますた。
◆1000突破企画小説 / 君の好きな僕が僕は嫌いだった。
——『けれど、私は私が嫌いだよ』
それは、桜の花びらが散り、新緑が木を飾る時。
それは、身体に汗が纏い始め、初夏の風が顔を覗かせる季節。
それは、私の世界に“沢田”という存在が迷い込んできた日。
私の世界は、見事に反転して、逆転した。
平凡は次第に非凡に塗りつぶされ、平和は戦争へと摩り替わった。私が憎まれ口を叩いて、沢田が苦笑を浮かべる。獄寺が私に対して怒る。山本が宥める。そんな日常は、私の心にいとも簡単にすんなりと浸透していった。きっと、それが“普通”になっていた。
「東城さんって、なんか……凄くいい人、だよね。言ってることは捻くれてるけど、込められた思いは真っ直ぐっていうか……」
「……。は、何それ。何がどうなったらその答えに行き着くの? かなり不思議なんだけど。てか捻くれてるとか失礼だな」
「え、えーっと。何となく? とにかく! オ、オレは東城さんのそんなところが好きなんだよ! 悪いかよ!」
「逆ギレ?」
ある日、沢田と私が交わした会話だ。沢田の顔は、酷く優しかった。いい、人。そんな馬鹿な。私はこの世に生を受けてから、「いい人」だと言われたのは初めてだ。「東城さんって捻くれてるよね」とは何度も言われたけれど。
「込められた思いは真っ直ぐ」……か。真っ直ぐなのは、沢田のほうではなかろうか。
***
真っ直ぐだからこその欠点もあるのだと、きっと沢田は知ったであろう。真っ直ぐだからこそ、私は自らの気持ちに正直に突っ走るのだ。それが、間違った道であろうとも。そうだな、沢田。確かに私は真っ直ぐなのかもしれない。だから、私は“真っ直ぐ”に復讐の道を突き進むとするよ。
——“オレは東城さんのそんなところが好きなんだよ! 悪いかよ!”
——“逆ギレ?”
“そう言い合ったあの日に帰りたい”なんて、そんなこと思ってはいけない。わかってる。私は振り返らない。前だけを見続ける。後ろで私を呼び止める沢田の声になんて気づかずに、横で私を追い続ける皆の足音になんて気づかずに。
仲間。その言葉がどんなに重いかを教えてくれたのは沢田たちだ。いくら私が道を踏み外そうとも、いつまでも沢田たちとは仲間でありたい。わがままだなんて知っている。けれど、願うことは自由だ。
“ありがとう。私も沢田の優しいところ、好きさ。けれど——”
私は確かに、そう呟いた。あの日、私を好きだと言った沢田に、そう返した。けれど、その言葉は誰にも拾われることはなかった。それでよかったのだと思う。
“けれど——、けれど、私は私が嫌いだよ”
その続きの言葉を聞けば、沢田はきっと怒っただろうから。