二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【《仮復帰》標的40更新】 ( No.121 )
- 日時: 2013/01/08 22:08
- 名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: 6xS.mLQu)
- 参照: ※標的39と40を消去させていただきました。
金属音が増えると共に、地面に突き刺さるクナイも増えていく。その多さが、今までの練習の状況を物語る。そこらにいる一般人並程度——いやもしかしたら、それよりも下かもしれない——の能力しか持たない私には、この練習は過酷である。けれども、ここで諦めていれば格好がつかない。私は復讐のためにこの場所に来たのに、こんな初歩的な練習ができないからといって尻尾を巻いて帰るわけにはいかないのだ。せめて、あいつ。あいつを、越したい。あいつを上回ることができて、初めて私は復讐ができる。私にだって、秘め事くらいある。あいつのことも、その秘め事の内の一つであった。
さすがに長時間剣を降り続けていたため、剣の重さにも慣れていたのだが、少々疲れが見え始めたせいか、体力の消費が早く感じる。それを悟られまいと、淡々と剣を振る。これくらいで疲れていれば、私はこの世界で生きてはいけないのだから。せめて、もう少し。もう少しだけ。そう思うにつれて、焦りが私の心中を支配し始める。無心になれ、と念じても、なかなか焦りを隠すことができない。まだまだだな、と自嘲していれば、とうとうクナイに剣があたらなくなってきた。スクアーロさんの顔が、険しく歪むのを見て、ますます焦りが、私を襲う。頑張れ、自分。これくらいやれなくてどうするんだ。そんなことでは、あいつはおろか、沢田や獄寺さえも越すことはできないではないか。
「剣を置けぇ!」スクアーロさんが、怒鳴る。泣きたい気持ちを抑えて、剣を手放す。その拍子に、ふっと力が緩んで、がくっと膝をついた。近くにあったクナイが、私の足を傷つける。血が滴り落ちるのをぼんやりと見ていれば、人の影が私に落ちる。スクアーロさんだ。「——もうやめにするぞ。こんなんじゃ練習にならねぇ」その声が、酷く冷たく感じる。スクアーロさんは、普通どおりの声を出しているつもりなのだろうが、今の私にはそうは思えなかった。情けない、そう思う。情けない情けないと自分を罵りながらも、その欠点を直せない自分が腹立たしい。結局、私も口だけで、所詮悲劇のヒロインぶった自分に酔っているだけなのだろうか。かちゃり、急に、金属音が聞こえた。意味がわからなくて、スクアーロさんを見上げる。なぜだ。なぜ。首に感じる冷たさを感じながら、思う。スクアーロさんの剣が、私の首を捕らえていた。
「う゛お゛ぉぉい!」スクアーロさんが、私をギンッと睨む。「根性のねぇ奴に、ヴァリアーにいる資格はねぇぞ!」
「…………わかってます、よ」
復讐をやめたいわけではない。けれど、ここまで自分の軟弱さを突きつけられたら、泣きたくもなってくる。だから、強くなろう強くなろうと自分に言い聞かせても、焦りが強くなるだけで、どうしたらいいかわからないのだ。けれど、今日を逃せば、明日はもうベルの練習だ。スクアーロさんから何も得ることができない。考えろ、私が今すべきことは何だ。
「スクアーロさん」声を、絞り出す。「——続けてください」剣を握り締めて、私はスクアーロさんを見上げた。スクアーロさんが、ニッと笑う。
「その目が見たかったんだ。その、根拠もねぇのに自信に満ち溢れた——強ェ者の、目」