二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【標的40更新しました】 ( No.125 )
- 日時: 2013/02/17 12:22
- 名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: 6xS.mLQu)
- 参照: ※標的39と40を消去させていただきました。
バチカン市国。某ネズミの遊園地ほどしかない面積と、800人弱の人口。しかし、そんな都市国家バチカン市国は、カトリックの総本山である。そのためか、キリスト教に所縁ある建物が多く存在し、優美で荘厳なその町並みには圧巻の一言だ。近くで売っていたソフトクリームを大きな口で食べながら(残念ながらソフトクリームをなめて食べるほど私は女の子ではない)、ベンチの上で見慣れない風景を楽しむ。その偉大なる風景をぜひとも言葉で表現したいものだが、生憎小学生である私に文化遺産の云々を語ることはできないので、「きれいだ」という一言で済ませておこうと思う。
さて、これからどうしたものか、と燦々と輝く太陽を見上げた。ソフトクリームをコーンまで食べつくして、手の甲で口を拭う(残念ながらハンカチで口を拭うほど以下略)。「んー」と唸りつつ、背伸びをした後、私はベンチから飛び降りた。なにしよう。あ、あれだ。確かバチカン市国には大聖堂があった。ソフトクリームを買う際にポシェットに押し込んでおいたしわしわの地図を開く。せっかくだし、ここいこう。けれど、私が地図を正確に読めるかは定かではないので、念のため回りの人に聞くべきだろう。と、町に視線を滑らせる。お、私と同じくらいの少年発見である。大人に聞くのはそれなりに勇気がいるのでまず手始めにあの子に聞こう。
「えっと、……che io……、sono spiacente(あの、すみません)」
「バカでもわかる!イタリア語講座」と、少しばかり失敬なタイトルの本を片手に、なれないイタリア語を喋る。すると、金髪や栗髪の人ばかりのイタリアでは珍しい黒髪の少年は、ゆっくりとした動作で後ろを振り返った。
「————え、」
はっ、と息を呑む。少年の端正な顔立ちが、私の視界を占領している。いや、着目すべき点はそこではない。——少年の目。少年の目が、私の目を捕らえて離さない。声を失うほどに、美しい青が、そこにはある。そして、その隣には、鋭利な雰囲気を感じさせる、赤。左右非対称なその瞳の色が、私に深く印象づけている。オッドアイ。確か、左右非対称な目の色を持つことを、そう言った。しばらく呆けていると、彼が口を開いた。ぼそりと、小さい声を拾う。
「……ああ、精神世界で、お会いしましたね」
————え。
「あの。精神世界、とは?」
「いえ、何でも」
「ていうか、にほんご……」
「ええ、少しくらいならば。それで、僕に何の用でしょうか」
あ、と思う。そういえば、私は道をききにきたのだった。先程少年が呟いた言葉が気になるが、私は無理矢理彼の瞳から視線をはずして、にっこりと笑いかけた。精神世界。現実離れした言葉だ。同じく現実離れした目を持つ彼には、お似合いなのかも知れないが。
「あ、えっと、大聖堂までの道を教えていただきたくて」
「ほう、それならば、お供しましょう。僕も丁度、用があってその辺りまで行く予定なのです」
「ありがとうございます」
少しだけ私より身長が高いが、目線は同じである彼は、控えめに微笑んだ。「クフフ」と妙な笑い声が聞こえる。ちょ、待て。その笑い声はおかしいだろ。——と、いつもならば考えるのだが、私の頭の中はあの青と赤で埋め尽くされていた。別に少年に一目惚れをしたわけではなかった。ただ、私の中で何かが引っかかったのだ。見ず知らずの私を気遣って、優しげな声色で離す少年の笑顔が、なんだか嘘のように思えて、気持ちが悪い。
「さて、行きましょうか」
彼のきれいな赤と青の目と、私の目が合う。その途端、違うと思った。赤だけれど、赤ではない。青だけれど、青ではない。彼の目には、どす黒い、何かが渦巻いている。真白なパレットを、瞬く間に埋め尽くす黒が見える。冷たい深海に眠るような、底なしの暗さがそこにはある。そう感じる。おかしい、と思った。確かに少年の瞳は、赤と青で構成されているというのに。