二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【標的41更新】 ( No.127 )
日時: 2013/02/17 12:37
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: 6xS.mLQu)
参照: ※標的39と40を消去させていただきました。

※ちょっとエグいです。


 「待って」息も絶え絶えに発した言葉は、彼の耳に届かなかったようで、いつのまにか掴まれていた腕が赤くなっているのを気にする間もないほど、少年の歩くスピードは速い。くるしい。小学校では私は図書クラブに入っていて、運動には体育以外で縁がない。だから、ただちょっと速く歩くだけでも、息切れしてしまう。「待っ、て!」やっと、少年が立ち止まって、はっと後ろを振り向いた。私との視線が交わる。少年は、ふっと微笑んだ。え。ほほえん、だ?なぜ?「変わらない」少年が呟いた。「貴女は、変わりませんね」え。「この世は、諸行無常だというのに」「しょぎょう、むじょう?」待って、わからないよ。私、小学生だから、そんな難しい言葉、わからない。「いろはの唄を、知っているでしょう。」「うん、いろはにほへとってやつだよね」「そうです、その唄は、諸行無常を表している。意味は、この世のあらゆるものはすべて移ろいゆく」「…………」「変わらないものなど、ないというのに、貴女は、ずっと昔から、」頭が割れそうだった。意味が、わからない。どうして、そんなことをいうんだ。

 「目が、きれいだ」彼の人差し指が、私の瞼に触れた。そして、親指が、涙袋を捕らえる。そうして、彼の指に力が込められた。まるで指で私の目をえぐるように、どんどん力が込められて、それから。

 「忌忌しい」目元に添えられた彼の指が、力なく離れていく。「何度か貴女の夢にはいりこめるほどに、僕と貴女の波長は噛み合い始めた。貴女は僕が嫌いなのでしょうが、ひとつ言っておきましょう。」


 「——貴女は必ず、僕の元へ」




 — ——、




 目が、じくじくと痛む。彼の名は、六道骸というらしい。意味深な言葉を残していった彼の目は、やっぱり黒い闇が纏わりついていて、けれど憂いを含んでいた。彼のいう、昔、がわからない。私は彼なんて知らない。どうして、私のことを、彼は。精神世界とは、なんなのだろうか。考えれば考えるほどに、目より頭が痛む。痛みの波に呑み込まれて、ただ、瞼を落とす。


——“貴女の目は、きれいですね。ですが、僕の目は、愚か者どもに、穢されてしまったのです。ああ、忌忌しい、赤と青”
——“ううん。むくろくんの目は、きれいだよ。けれど、けれどね、おかしいなあ。むくろくんの目は、たしかにきれいな赤と青なのに”


————“黒色に見えて、しょうがないんだ。”




(僕だって、できることならば、貴女のように平凡に生きたかったのに。けれど、もう嫉妬などしませんよ。もう少しで、貴女も僕と等しい存在になる。僕が嫌ったマフィアを、貴女も嫌うことになる。僕はもう、一人ではない。貴女も、黒色の渦に飲み込まれて、そのきれいな目を、黒く黒く塗りつぶすことになるのだから。)


「——共に、復讐を。」

 
 聞こえないはずの六道骸の声が、私の脳を揺さぶって、反響している。