二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  【リメイク】 皓々と照る月 【REBORN】 ( No.16 )
日時: 2012/09/05 17:17
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: mxpCGH6q)
参照: ※ツナ寄りではありませぬ。というか恋愛物でもない。

 こんな世界、消えてしまえばいい。なんであの時金髪のティアラ被った男に殺してもらわなかったのだろう。今になって後悔しても遅いというのに。ああ泣ける。こんなの望んでない。どうして平凡に生きさせてくれないんだ。どうして、私なんだ。マフィアの参謀?冗談じゃない。私は、普通に生活するんだ。平凡に生きるんだ。そうすれば、きっと幸せになれた。特別なんて望まないから、普通の幸せを手にしたかった。なんでこうも上手くいかない?なんで、なんで、なん、で。

 視界が滲んで、ぼやけて、涙が零れ落ちた。


「、」
「——あれ、東城さん?」


 声が、聞こえた。沢田の声だ。ああ、コイツはもう、なんでこんなときに、来るのかな。前から思ってたけど、沢田の声は、お父さんの声に似てる。声の低さとかじゃなくって、その優しい感じが、似てる。

 一気に、涙腺が崩壊した。滝のように、涙が次から次へと、流れてくる。

 沢田が息を飲む音が聞こえた。


「えっ…!?ちょ、東城さん!?泣いてるの!?」
「ああ…もう、うるさ…」


 私は、ずず…と鼻を啜りながら、沢田に抱きついた。沢田が慌てふためく。「えっ!?」とか言って赤面しているのが、肩越しに見えた。様々な感情が入り混じって、乱れて。もう何がなんだかわからないくらいに、脳内はぐちゃぐちゃで。

 ただ、ぎゅうっと沢田の背中に腕を回した。ああ、泣ける。


「今だけ…肩貸して…。」
「え、…う、うん…。」
「これだけに、するから…。私、強くなるから…。」


 それだけ呟くと、私は沢田の肩に顔をうずめた。柔軟剤の香りがする。あ、これ私と同じ柔軟剤だ、なんて思えるような状況じゃないはずだけど、自らの気を逸らすようにわざと考えてみる。すると、沢田が小さく口を開くような気配がして、私は無意識に息を殺した。


「つ、強くならなくてもいいんじゃないかな?」
「…………、」
「なんで強くならなきゃいけないの?東城さんは、東城さんのままでいいじゃん。」


 止まりかけてた涙が、また流れる。あほだろ、沢田。また泣かしてどうする。ほんと、あほな男。けど、そうだ。沢田はこんな奴だった。いつもは頼りなくて、弱い奴なのに、たまにこうやって核心を突く。そんな奴だから、獄寺はついてきた。そんな奴だから、山本は沢田を友達と呼んだ。そんな奴だから、京子ちゃんは笑って接した。そんな奴だから、私は、沢田を退けた。

 そうだ。そんな沢田が、苦手だったんだ。私は。


「……ありがと、ツナくん。」
「!…うん、ユウちゃん。」


 初めて、その名を呼ぶ。嬉しいような恥ずかしいような、そんな感情の入り混じった声で、沢田が同じく私の名を呼んだ。ユウちゃん。どこか甘酸っぱい響きを含んだその言葉を脳内に焼き付けながら思う。

 私は、やっぱり沢田のことが、苦手だ。