二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リメイク】 皓々と照る月 【REBORN】 ( No.17 )
日時: 2012/09/07 20:24
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: mxpCGH6q)

 『応接室に来い』。真っ白な画面に、その六文字が黒々と輝いている。携帯を持ったまま、フリーズしてしまった私はきっと間違っていない。きっと。送り主はリボーンくん。見事に私の予想のはるか上を行ってくれるな、君の行動は。私は慣れた手つきで文字を打つと、『いや』とだけ送信した。するとすぐに返事は返ってくる。『拒否権はねえぞ』『ある』『ねえ』『ある』……暫くそんなメールは続いた後、私はとりあえず冷静になろうと近くの自動販売機で買ったミネラルウォーターを頬に当てた。何故、応接室なのだろうか。応接室に、何かあるとか?次第にじんじんと冷たくなってくる頬からようやくミネラルウォーターを離して、そのままキャップを右に回した。ぶ、しゅっと空気の抜けた間抜けな音が響く。

 応接室、おうせつしつ…。確か、来賓の方をご接待する部屋な筈。学校案内のとき見てみたが、黒い革張りのソファーとかぴかぴかの机とか、豪華な内装だったことを覚えてる。そこまで考えて、私はふと思い出した。応接室は、風紀委員会の委員室じゃないか!何で思い出さなかった、私!

 【応接室に行く × しかもこの前サボッた = 咬み殺される。】という方程式が一瞬で私の脳内にて作られる。そうだ、逃走しよう。私はすぐさま携帯の電源を切って、ポケットに押し込んだ。そのまま渋々ながらも応接室に向かおうとしていた足を止めて、踵を返す。


「リボーンくん、先に謝っとくよ。……私は、逃げるから!」


 誰もいない廊下で呟きながら、早足で帰路を急いだ。




 ***



 
 『——なんでこなかった?』。携帯越しに、鋭い声が聞こえた。電話モードに入っている携帯画面には、リボーンくんの名がでかでかと映し出されている。携帯越しからでもひしひしと伝わるわずかな殺気にも、動じなくなってきた。電話を耳に押し当てながら、私はベッドに身を放り投げた。


『まあ一応は想定内のことだったが——、次やったら承知しねえぞ』
「いや知らねーし。別にさ、想定内ならいいじゃんか。確かにいかなかったことは謝る。けど、リボーンくんのお遊戯には付き合ってられない。それが自分を傷つけるものだったら、なおさらさ。」


 冗談ぽく、それでも本音を交えて、その言葉を紡いだ。私は何でもいうこと聞く奴隷でもリボーンくんの友達でもない。ましてやマフィアなんかでもない。そんな凡人が、リボーンくんと仲がいいわけでもないわたしが、雲雀恭弥の元に行くと思ったら大間違いだ。


『……言うようになったじゃねーか、ユウ。』
「私の行くこれからの未来に、リボーンくん……いや、お前はいらない。——私の世界にお前は邪魔だ。」


 マフィアになって得る強さなんかいらなかった。わざと冷たい言葉を吐く。きっと、電話越しではリボーンくんはちっとも動じずに無表情でいるのだろう。そんなことはわかっていても、少しは揺らいでくれればと思う。


「……私は、マフィアになんか、」
『——ならないってか、ユウ?』
「…………、!」
『お前はもうマフィアの道に片足突っ込んでるんだぞ。今更逃げようとしたって、遅いんだ。マフィアから逃げようものなら、お前は何かを危険に晒すことになるぞ。マフィアには血の結束ってもんがあるんだからな。』


 つまり。私が逃げれば、誰かが犠牲になると、いうことだ。そんなの、いやだ。私のせいで誰かが傷つくだなんて、いやだ。そうは思ってても、私は。リボーンくんが私を犠牲にしてまで何かを成し遂げようとするように、私も誰かを犠牲にして平凡を取り戻さなければならない。おあいこ、でしょ。

 だから、私は鬼になる。長い、長い、夢を見るために。


「——それが、どうしたのさ。」


 私にだって、夢がある。希望がある。考えがある。ぷつぷつと噴出す汗を振り切るように、その言葉を紡いだ。


「私にだって、譲れないものがあるんだ。」


 それが、どれだけ無情な言葉なのかは、まだ未熟な私にはわからない。けど、私が最悪な言葉を言っているのは、わかる。自分勝手な、私。本当に醜い。

 けれど、私は。



 けれど、私は、その言葉を口に出すのだ。


「誰がどうなろうと、関係ない。」


 多分リボーンくんは、それが本心じゃないことくらい、わかってた。私の世界は誰にも崩させない。その思いは、揺らがずにこれからも私の胸に咲き続ける。


 私には、助けてくれる人なんていらない。助けてくれなくていい。自分で何とかする。だから、もう私に関わるな。