二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【リメ】 ( No.21 )
- 日時: 2012/10/08 13:45
- 名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)
「ユウ。起きな。」
「——……おじいちゃん。」
朝。皆に怒鳴り散らしてしまった、翌日。もう登校時間ぎりぎりだと言うのに未だ布団に包まっている私を案じてか、おじいちゃんがやってきた。垂れ目がちだが、三白眼のせいで目付きが悪く見られてしまう優しいおじいちゃん。けれど肩には趣味の悪い刺青が彫られていて、思わず「おじいちゃんってヤクザ?」と聞いたことがある。おじいちゃんは「トップシークレットさね!」とケタケタ笑ってた。思えばおじいちゃんは、イタリアに行ったことがあるらしい。小さかった私に、「やっぱり本場は違うさな」とぼやいていた覚えがある。本場とはきっと、マフィアのことだったのかもしれない。もしかしたら、おじいちゃんは本当はマフィアだったのかも知れない。今更ながら、そう思う。
「おじいちゃんは、マフィアだったの?」
「ふふ、気になるのかい? まあ、教えるつもりはないけどねえ。そうさな、けれどリボーンとはもう長い付き合いになるさあ。詳しいことは、自分で調べるといい。真実がわかったら、私のところへ来なさい。真実がわかったそのときは、私を責めてもいい。殺してもいいさね。ほうら、この紙切れに、真実は隠されているからねえ。見てみてごらん。」
おじいちゃんは、私に一枚の資料のようなものを渡しながら、三白眼を細めてケタケタ笑った。ずれた丸眼鏡を中指でくいっと直しながら、私の目線に合うようにしゃがみこむ。「ユウは、死んだ妻に似ているさね。彼女も、平凡を求めて運命に抗おうとしていた……。結局、運命に逆らえきれずに死んださあ。」その笑顔は、どこか儚くて、優しかった。まるで、脳内の思い出のアルバムを、1ページずつ捲っているように、懐かしそうに愛おしそうに、次の言葉を紡ぎだしていた。おじいちゃんは、その整った顔を緩めて、私の頭を撫でる。
「今日はもう、学校は行かなくていいさね。あんたのお母さんには、私が言っておきまさあ。」
「——おじいちゃん。」
「なんだい?」
「……おばあちゃんは、美人だった?」
その質問を聞くなり、おじいちゃんは、柔く目を細めて微笑んだ。
「——勿論。」
愛おしい。ただ、それだけの気持ちが込められた言葉は、とても美しく感じた。とても、とても。
***
「ユウは、とてもお前に似てるさね。——どうか、ユウはお前のように、殺されないで欲しいねえ……。なあ、そう思わないかい?」
男は、ある美しい女の写真を手に、しみじみと呟いた。その女は、非凡に関わったがために殺された、哀れな女で、男はその女の夫であった。女が殺される前に生んだ子供には今やもう妻も子供もおり、その子供の名は、夕と云った。——東城の、者であった。
「夕月夜、儚く散りらむその夜は、手折れる脆い花のようなり……。」
ユウは、お前と同じ道をたどってしまうのかねえ。男は、そう呟いた。