二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【傍観主生息中】 ( No.30 )
- 日時: 2012/09/13 21:41
- 名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)
どうやら神様は私が大嫌いならしい。それを中学生という若さで認識した私は一体何なんだ。哀しきかな。
体育祭当日。周りのテンションについていけずに寝惚け眼で参加した開会式も学級対抗リレーも終わり、とうとう私の出番が訪れた。借り物競争。毎年一個はハズレがあるという魔の競技である。どうかハズレが当たりませんようにと見えもしない星に願っているのは私だけではないはずだ。クラスカラーである赤色のハチマキをきゅっと頭に締めなおす。ちなみに何故か女の子は皆ハチマキをカチューシャみたいにして締めている。KYになりたくない私も空気を呼んでハチマキをカチューシャのように締めた。こんなときにまでもお洒落に気を使う女の子はとても偉大だと思う。
開始の時刻が間近に迫ったところで、先生が苦労して引いたであろう白線を足で消しながらスタートラインに並んだ。「東城ー!負けたらゆるさねーかんなー!」と叫ぶクラスメートに向かって「お前死んでいいよー」と返しながら、スタートの合図を待つ。
パアァンッと渇いた音と共に、自然に前へ前へと足が進んだ。決して足が速いわけではない。3位くらいの順位をキープしながら、借り物が書かれた紙を入れた箱の前で止まる。イチかバチかで一気に掌を突っ込んで、がさがさと中を漁った。適当に紙を引いて、中身を見る。
『いえあ! これがハズレだぜソコの残念なキミ! 借り物はー…“風紀委員長”の腕章! ドンドンパフパフー!』
……。なんともカラフルなペンでふざけたことを書かれた紙を拳の中で握りつぶした。これほどまでにイラッとしたことはない。つーかこの前——前髪切り忘れちゃった感じの金髪自称王子と会ったときだ——雲雀恭弥の前で堂々とサボってそのまま逃げちゃったんだけど。何コレ壊滅的。腕章とかとってくる前に咬み殺されちゃうじゃん。
「うおーい! 東城何してんださっさと借りて来いやー!」
「…………。」
ウザイ男の声が聞こえる。もう、諦めよう。このまま悩んでたってどうせいつかは見つかって、咬み殺されるのだから。無駄な足掻きはやめよう。私は、騒がしいグラウンドの真ん中で、一際大きい声を出した。
「——…っ雲雀先輩!」
その名を呼んだ途端、あたりは静寂に包まれる。水を打ったように静かになったグラウンドを見渡せば、小さく応接室でこちらを見ている雲雀恭弥が見えた。雲雀恭弥は、私を確認すると好戦的な目付きと笑顔を口にたたえ、応接室の窓から飛び降りてきた。ちょ、応接室何階だと思ってるんだ。一瞬で私の前に来た雲雀恭弥は、私をまじまじと見つめながら、なおもにやりと微笑んでいる。
「……東城夕。この前はよくも僕から逃げてくれたね。——ねえ、咬み殺しても、いい?」
「—……っ」
「無言は肯定と見做すよ。さあ、覚悟しなよ。」
静寂なグラウンドに、雲雀恭弥の声だけが響いた。恐い。恐いよ。けれど、このままじゃ何も始まらない。お父さん譲りの大胆さと図太さと、それから無鉄砲さ。今発揮しないでいつ発揮する。私は雲雀恭弥がトンファーを構えるのを見ながら、叫んだ。
「——腕章を、貸して下さい!」
「——……何言ってるの、貸すわけないでしょ。これは僕の誇りさ、簡単に渡すなんて、馬鹿のすることだ。」
「腕章を、貸して下さい!」
同じことしか言わない私に、雲雀恭弥の片眉が、ぴくりと動いた。
「殺されたいの?」
「いいえ。けれど、腐っても私はA組の一員です。……たった一つ! ——たった一つの競技を全うしようと思うのは、いけないことですか!?」
私は、A組だ。いくらもがいても拒んでも、変えられぬ事実。任された以上、最後までやりぬくのが当たり前ってものだろう?
私は、A組の一柱を担う生徒なのだから。