二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【傍観主生息中】 ( No.38 )
日時: 2012/09/16 11:13
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)

 あの日、金髪自称王子と出会った路地裏。そこに、私は居た。この路地裏にいれば、また金髪自称王子と出会える気がしたから。ただの勘だけれど、何となく、そう思ったのだ。金髪自称王子に出会わなければいけない理由。そんなの、私の中では沢山ありすぎた。彼は、人を殺してた。笑って、無邪気に。きっと、彼はマフィアで、殺し屋だ。最終的についた結論は、それしかなかった。

 血を滴らせたナイフを手に持ち、返り血も浴びずに立っていた。ただ、立っていた。一般人ではないと、すぐ判った。彼が、一つも動揺していなかったからだ。人を殺しても、私に見つかっても。ただ、喜び。血を見れることの、喜びを噛み締めて。純粋に、恐いとしか思えなかった。その狂気的な表情に、恐いとしか思えなかった。他の雑念など、いらなかった。

 恐い。その一言が、彼には一番相応しい。


「あっれ。お前…この前のヤツじゃん。何してるわけ? んな所で」


 相変わらず、金色の髪が眩しい。けれど、髪のところどころに、赤がこびりついている。ししっと白い歯を覗かせながら笑う彼の、手を掴んだ。彼は、「気安く触ると殺すぜ?」ともう片方の手でナイフをチラつかせているけれど、それでもいいと思う。とにかく、今彼に用件を伝えることだけが、私に課せられた選択。前髪で目は隠されているというのに、人をも殺しそうな鋭い視線が私を射抜く。

 きっと、私がどれほど全力を出して襲い掛かっても、この人には叶わない。


「お願いが、あるんです」
「ふーん。オレにお願いだなんていー度胸じゃん。で、何」
「私を、貴方の所属する組織にいれてください」
「…………」


 ナイフが、私の首元に添えられた。「お前、何者」淡々と。ただ、淡々と機械的に発せられる声が、恐怖を招く。「どこまで、知ってんの」彼が、ナイフに力を込めた。軽くナイフが刺さり、首からつーっと温かい血が流れる。「何も、知りません」同じく私も、淡々と答えた。何も知らないのは本当だ。けれど、私が平凡を手にするにはこれしかない。非凡に染まって全てを終えたら、私は平凡に戻るのだ。


「けれど、貴方がマフィアだというのは、わかります。私は貴方たちに危険が及ぶようなことはしませんし、面倒事にだって巻き込ませません。これは単なる私情です。けれど、私は決めたのです。憎きあのマフィアを殲滅するために、私はマフィアになりたい。強くなりたい。そうすることで、私は平凡へと戻れるのです」

「——ししっ、意味わかんね。何でマフィアを殲滅すっためにマフィアになんの? お前、マジで変だよ」

「目には目を歯には歯を、です。」


 彼は、「成程ね」と笑って、ナイフを閉まった。前髪越しに目があったような気がして、逸らすことなく、そのまま彼の目を見つめる。彼は、あの独特な笑い声を響かせて、私に言った。


「今から行くのはイタリアにある、独立暗殺部隊VARIA。ちなみに王子の名前はベルフェゴールね。王子に逆らうとかありえねーからヨロシク♪」
「——よろしくお願いします!」


 全ては、復讐のために。そのために、私は在る。