二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【平凡主生息中】標的25更新 ( No.48 )
日時: 2012/09/23 09:20
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)
参照: 沢田綱吉目線でいってみる。

◆  閑話01 / 標的25.5 / ツナ目線



「——ねえ、沢田。私はお前を、忘れるよ」
その言葉は、あまりにも残酷で。その冷たい声を、目を。オレは、忘れることができないのだ。

 東城さんは、ただのクラスメイトだった。平凡で目立たなくて、誰にも平等に接して。けれど、オレや獄寺君、山本には話しかけてこなかった。今思えば、オレたちが非凡だったからこその行動だったんだと思う。だけど、リボーンは、オレは。彼女を非凡に連れ込もうとした。平凡でありたいと強く望む彼女を、無理矢理非凡に染めてって。彼女の意志なんて、そこにはなかった。オレたちは、自分勝手だった。

 知らなかった。ここまで思い悩んでいるなんて。あのとき怒鳴られたときも、どこかで安堵していたんだ。ああオレたちに強い感情を見せるくらい気を許してくれたんだなって。少しだけ、彼女に近づけた瞬間だった。そう、思っていた。


 けれど、違うのだ。彼女は、オレたちを嫌っている。拒んでいる。開きかけたと思った心だって、もう完全に閉じられている。結局、オレは彼女を壊しただけだった。彼女のシアワセを奪っただけだった。


 泣きたいのは、彼女だというのに。


「リボーン……。オレ、どうすればいいかな……。」
「知らねえぞ。それはお前が決めることだ。けれどな、ユウは心の中で言ってたぞ」


 心の中?そうか、リボーンは読心術が使えるのだ。そのことを思い出して、リボーンの言うことに耳を傾ける。次の瞬間リボーンの口から発せられた言葉は、幾らか驚きを誘うものだった。






「——ツナたちのことが、大好きだったとな」

「————っ! ……え……?」


 その言葉を聞いた瞬間、一筋、頬に涙が伝った。嘘だ。彼女は、オレのことが嫌いだったはずなのに。彼女は、好いていてくれたのか。愚かなオレたちを、好いていて、くれたのか。

 涙が、頬を伝い、床へと落ちていく。男なのに情けないってぼやいてるけれど、リボーン、お前もその黒い帽子深く被って何してるんだよ。泣いてるとまではいかなくとも、泣きそうになってるんじゃないのか?

 何だよ。オレたちは結局、馬鹿だっただけじゃないか……。


「決めたよ、リボーン。オレは絶対、東城さんを連れ戻すんだ。」
「——……よく言ったぞ、ツナ」


 にいっと笑うリボーンを見つめながら、オレは拳を固めた。もう遅いだなんて、そんなこと知らない。オレたちには東城さんが必要なんだ。


 “大好きだった”なんていわせない。オレも獄寺君も山本も、東城さんが今も“大好き”なんだから。


 一緒に、帰ろう。東城さんと獄寺君と山本と、それからオレ。一緒に生きて、帰るんだ。


 オレたちの居場所は、ここなんだから。