二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【イメージ絵更新】 ( No.57 )
日時: 2012/09/30 17:49
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)

 「何で、」思ったより、掠れた声が出た。私の目の前には、おじいちゃんと、なぜか京子ちゃん、花ちゃん。どうして、私の家にいるんだ。おじいちゃんに視線を滑らせるけれど、おじいちゃんはやんわりと微笑んだだけだった。先程の沢田といい、京子ちゃんといい。今日はなぜだかよくクラスメイトに出会う。出来るならば、会いたくなかった。誰よりも純粋で真っ白な、京子ちゃんには、会いたくなかった。止まったばかりの涙が込み上げてきて、情けない。ああ、なんて情けないのだ。私は。

 「ユウちゃん」京子ちゃんが口を開いた。花ちゃんも私の名前を呼ぶ。深刻そうな顔つきに、思わず身構えてしまった。おじいちゃんは、相変わらず微笑みを崩さぬまま、口を開いた。


「笹川さんと黒川さんは、あんたのことが心配らしいねえ。泣きそうな顔で訪ねてきたさあ。」


 おじいちゃんが、柔い声色で言う。何かを悟ったような、声色で言う。おじいちゃんはきっと、わかっていた。私が復讐の道を行くことを。だからこそ、おじいちゃんは二人を家にいれたのだ。誰だろうと家に入ることを許さないおじいちゃんが。——二人が私を引き止めてくれれば、と、密かな願いをかけて。けれど、そんなことで私の決心は揺るがない。誤算だったね、おじいちゃん。

 私の中で二人の存在は、そんなに大きくない。


「ユウちゃん……。急に、ごめんね。お邪魔しちゃって……」
「いいよ、別に。それよりどうして私が心配なの?」


 わかりきったことを、問う。


「えっと……、何だか、ユウちゃんが遠くに行くような気がして……」
「ふうん。京子ちゃんは心配性だねえ。まあ、ビンゴだよ。」
「……え、」


 どうせ、明日になればわかること。隠すことなんてない。そう思って、私は言った。「私、イタリアに行くんだ」京子ちゃんが、吃驚したような顔をして、私に近づいてきた。花ちゃんは、険しい顔のまま。どうして?と、京子ちゃんの唇が動いた。あくまで唇が動いただけで、その言葉は音として伝わることはなく。動揺を隠し切れない京子ちゃんの代わりに、花ちゃんが言った。


「どうして?」
「それ、言う意味ある?」
「……! あるわよ! 私たち、友達だったじゃない……!」


 私の冷たい声に、花ちゃんは悲痛を交えた叫び声をあげた。それでも、私の表情筋はよほど堅いらしく、一つも自らの表情が変わることはなかった。いつまでも無表情な私を、信じられないような顔でまじまじと見つめた花ちゃんが、ぎりりと歯を食い縛る。


「何とか、言いなさいよ……!」
「……いつ?」
「……はっ?」
「いつ私は君たちの友達になった? ねえ、いつ? こんな私を友達と思ってたの? はっ、笑える。」


 花ちゃんは、心底呆けた顔をして、それから、目に沢山の涙を溜めた。「ねえ、いつなったの?」もう一度、問いかけた。ついに涙が、一粒ずつ零れ落ちる。花ちゃんが泣いたのをきっかけに、京子ちゃんも目に涙を滲ませた。

 ごめん。謝りたいけれど、今は謝れない。本当は、私を友達だと思っててくれて嬉しかった。けれど、私、もうダメなんだ。最低な私は、友達より復讐を取るんだ。悲劇のヒロインぶって、私は自分勝手に生きるんだ。ごめん。ごめん。


 「……っ京子、帰ろ」花ちゃんが、私に背を向けて京子ちゃんの手を握った。「っうん。じゃあ、ね。ユウちゃ……東城、さん」私の名前を言い直した京子ちゃんは、何を思っているのだろうか。手を取り合って逃げるように部屋を出て行く二人の後姿を、ただ、ぼんやりと見つめる。そんな私の目を覚まさせるように、ずっと見ていたおじいちゃんが私の肩に手を置いた。


 「——ごめん」

 
 二人のこと、友達だと思ってないわけないよ。本当は、大好きだよ。ごめん。こんな私で、ごめん。京子ちゃんだって花ちゃんだって、大好きだったんだ……。


 ああ、おじいちゃん。誤算だったのは、私のほうだ。どうやら私の中で二人の存在は、結構大きかったらしい。