二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【標的27更新】 ( No.65 )
日時: 2012/10/03 20:51
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)

「あの娘の目、どことなくボスに似ているな」


 誰かが、言った。私はボスを見たことがないため、褒められたのか貶されたのかは、わからないけれど。

 ベルにジェット機に乗せられて、たった数分でついたヴァリアー本部とやらは、まるでどこかのおとぎ話に出てくるお城のようだった。天を突き抜けるほどに高い屋根と、何百坪もある赤い絨毯に彩られた床。おまけに天井を覆うほどに大きなシャンデリアときた。私の小さくボロい日本家屋とは似ても似つかない。そもそも比べたらダメだと思う。

 そんな大きな城には似合わない黒い男たちが、殺気の含んだ目で私を睨みつけていた。その黒い男たちとは勿論、イタリアンマフィアで、なおかつヴァリアーの隊員であるのだ。

 ひしひしと痛いほどの視線を全身に感じつつ、私は出来るだけ目立たないようコソコソとベルの後をついていく。正直、生きた心地がしない。


「今ボスはいねーしなー、許可取んならロン毛だよな」
「……(ロン毛って誰だ)」


 ぶつぶつとひとり言を呟くベルに若干ひきながらも、半ば駆け足で黒い男たちの視線を逃れた。しかし、幹部がいるという部屋のドアをくぐりぬけると、先ほどより強い殺気の渦に呑み込まれる。意識が飛びそうだ。けれど、こんなところで気絶してたら何をされることやら。とりあえず私は今からヴァリアーに入隊するのだ(予定なのだが)。こんなことで気絶などできない。ぎりりと歯を食い縛り、足に力を入れて倒れないように踏ん張った。


「う゛おぉい! 誰だぁ、その女はぁ!」
「!?」


 うるさいほどに大きな声が、耳に入った。思わず視線を声の方向へ滑らせる。白と銀が混ざり合ったような色の長い髪、鋭気を含む目、左手の——剣。一目で只者じゃないとわかる。おそらくこの男が、先ほどベルの言っていた「ロン毛」。なるほど、確かに髪が長い。女である私だって、ベルくらいのショートヘアなのに。一際大きい殺気を出す男は、私を見るなり舌打ちをしてベルに目をやった。そして、大きく口を開け、もう一度叫ぶ。


「う゛おぉぉい! ベル! てめーはまた変なもん連れてきやがってぇ!」
「しし、うるせーし。別にいいじゃん」
「いいわけあるかぁ! 何枚におろしてやろうかてめぇえ!」
「何、やるわけ?」


 髪の長い男とベルが、互いに武器を構えた。あんなにきらきらと銀色に光る剣とナイフがこれから血に染まるのか。そう考えると、心臓がばくばくと音を立てた。緊迫した空気が張り詰める。「まあまあ、待ちなさいよ〜」——そんなとき、女口調の声が部屋へ響き渡る。女口調にしては野太い声だと思ったが、今の私にはその声は救世主のものにしか聞こえなかった。


「その女の子が恐がってるでしょ?」
「……ルッスーリアかぁ。……チッ、仕方ねえ」
「王子に指図するとかマジうぜー。まっ、今日のところは諦めてやるよ」


 ベルと男が、同時に離れて、胸をなでおろす。助かった。そう思って溜息をつけば、ルッスーリアと呼ばれた奇妙な髪形をした——男(?)が、私へ近づいてきた。なんとも奇抜である。ルッスーリアさんは、私に手を差し出して、女口調で喋りだした。


「貴女、名前なんていうの? 私はルッスーリアよ! ほら、スクアーロも自己紹介!」
「オレの名前すでに言ってんじゃねえかぁ。……まあいい。スクアーロだ」
「ご丁寧にどうも。……東城夕です」


 ぺこりと頭を下げると、「まあ! 礼儀正しい子ね〜」と一言。普通の常識だと思うのだが、気のせいなのだろうか。


「それにしても、どうしてここへ?」


 ルッスーリアさんが、首を傾げて疑問を口にした。来たか、と思う。スクアーロさんも同じことを思っていたようで、警戒の念が瞳にゆらゆらと浮かんでいる。覚悟を決めて、私は口を開いた。


「ヴァリアーに、入れていただきたいのです」


 もう、戻れない。