二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  【リメイク】 皓々と照る月 【REBORN】 ( No.8 )
日時: 2012/09/05 16:45
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: mxpCGH6q)

 帰り道の途中、ちょっとだけ遠回りした。のが間違いだった。間違いだらけの人生に絶望寸前な気分の私の目の前には、黒いボルサリーノとスーツを着た赤子が銃を持って立っている。何故。最近のおもちゃは精巧に作られてるなーと考えつつも冷や汗たらり。おもちゃだとしても、銃を突きつけられるなんてこんな経験レアだね!とか思えるわけない。とにかく私が運が悪いことを再認識した。否、すでに運が良い悪いの領域ではない。不幸だ。誰か私に幸せを募金してくれないだろうかなんて冗談を考えながらも、熱くなる目頭に手をやる。面倒事に巻き込まれないように生きてるつもりなのに、何故面倒事ばかりが私に降りかかるのだろう。とりあえずこの状況をなんとかしようと、目線をあわすためにしゃがみこんで、精一杯の笑顔を作る。やべ引きつる。


「…ど、どうしたのかな?」
「おまえが東城夕だな」


 うんそうだけど。…って何で知っているのだ。おかしい。おかしすぎる。そもそも何故赤子がスーツを着ているのだ。最初の方から間違いだらけだよ。訂正の仕様がないくらい間違えてるよ。赤子はニヒルに笑いながら「オレはリボーンだぞ」とヘリウムガスを吸ったかのような甲高い声で言った。まさかの横文字の名前。何処の国の出身でございますかなんて聞かない。聞きたくもない。


「…ご用件は?」
「ファミリーに入って欲しいんだ」


 は?ぱーどぅん?ふぁみりー?意味ワケわかめだよリボーンくん。家族になれってか?どれともアッチ系のファミリー?前者はありえない。じゃあ、後者しかなくなる。嫌な予感しかしない。黒いスーツと銃と、おまけにファミリー。私には、重すぎる話題だ。

 ああ、どうしてこんなに平凡をのぞむのに、平凡は訪れないのだ。苦しげに眉を寄せるわたしを嘲うかのように、リボーンくんが、ニヤリと笑った。


「ボンゴレのマフィアになれ。…ユウ」


 自慢ではないが私の祖父はイタリアに住んでいたことがあるのだ。故に、ボンゴレファミリーの名も、祖父から通して聞いている。

 マフィアになれ、とリボーンくんは言った。がらがらと崩壊する世界の中、私だけが取り残されて、そして虚無に襲われる。どうして、平凡を望んではいけないのだろうか。どうして、平凡は訪れないのだろうか。そんなの決まっている。平凡など、此の世にはゼロに等しいほどにしか、存在しないからだ。けれど、平凡をどうしても手に入れたかった。普通に暮らすことができれば、それでよかった。平凡で、普通の、人間になりたかった。こんな運命望んでいなかった。

 残酷に無情に、彼は言う。私に人殺しになれ、と。


「…いや、だ」


 その言葉に、リボーンくんが「拒否権はねえぞ」と言った。あなたは人権という言葉を知っていますか。苦笑いしながら、踵を返して一気に走り出す。逃走。


 人殺しなど、そんなこと。私には重過ぎる。結局わたしは、幸せな物語のヒロインなどにはなれないのだ。